改訂新版 世界大百科事典 「マントウ」の意味・わかりやすい解説
マントウ (饅頭)
中国料理の点心の一種で,めん(麵)とともに最も愛好されている。小麦粉を老麵という天然酵母と乳酸菌の混じった饅頭種で数時間発酵させ,強い酸味を伴うふくれ上がった生地に,碱という天然ソーダを加え,酸を中和して蒸して作ったもの。肉や野菜などの具は入れず,肉あん,アズキあんなどの入ったものは包子(パオズ)と呼ぶ。日本でいう中華まんじゅうは包子のことである。小麦生地にアルカリを加えると,生地は淡黄色に変色し,特有の芳香を発する。老麵発酵は中国独特のものである。作り方が簡単で,数日間の保存に耐えるため外出時の食事としても重宝であり,単味なので主食としての条件を備えている。饅頭生地で甘味あんを包んだものを糖饅頭という。トウモロコシ,ソバなどで作られたものもあり,苞米饅頭,蕎麦饅頭などという。これらには窩窩頭という別名もある。6世紀の《斉民要術》に出る白餅,蒸餅は饅頭の祖型であるが,饅頭ということばは宋代の《事物紀原》に初見する。同書では諸葛孔明が人の頭になぞらえて饅頭を作り,供物としたと記している。
執筆者:田中 静一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報