改訂新版 世界大百科事典 「ミツマタヤリウオ」の意味・わかりやすい解説
ミツマタヤリウオ
Idiacanthus antrostomus
ワニトカゲギス目ミツマタヤリウオ科の深海魚。体はウナギ形で,背びれとしりびれは体全体の後からそれぞれ約2/3と1/3の部分を占める。腹びれは体の前1/3よりやや後にある。雌は下あごに発光器をもつ1本のひげをもち,体長30cm以上に達する。雄はひげがなく体長5cmほどで成魚となり,著しい性的2型を示す。体側の下側と腹面に沿って胸びれ直下から尾びれ近くまで左右2列ずつの発光器列がある。雄では眼の直後に眼径と同大,またはそれよりやや大きい発光器があるが,雌では眼径より小さい。仔魚(しぎよ)は体長の1/3に達する眼柄の先に眼をもつ特異な形態でよく知られる。眼柄は成長につれて退縮し正常眼となる。ミツマタヤリウオ科Idiacanthidaeの魚は全世界の温・熱帯域の外洋から3種ほどが知られているが,分類学上未解決な点も多い。
執筆者:川口 弘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報