ミツマタヤリウオ(英語表記)Idiacanthus antrostomus

改訂新版 世界大百科事典 「ミツマタヤリウオ」の意味・わかりやすい解説

ミツマタヤリウオ
Idiacanthus antrostomus

ワニトカゲギス目ミツマタヤリウオ科の深海魚。体はウナギ形で,背びれとしりびれは体全体の後からそれぞれ約2/3と1/3の部分を占める。腹びれは体の前1/3よりやや後にある。雌は下あごに発光器をもつ1本のひげをもち,体長30cm以上に達する。雄はひげがなく体長5cmほどで成魚となり,著しい性的2型を示す。体側の下側と腹面に沿って胸びれ直下から尾びれ近くまで左右2列ずつの発光器列がある。雄では眼の直後に眼径と同大,またはそれよりやや大きい発光器があるが,雌では眼径より小さい。仔魚(しぎよ)は体長の1/3に達する眼柄の先に眼をもつ特異な形態でよく知られる。眼柄は成長につれて退縮し正常眼となる。ミツマタヤリウオ科Idiacanthidaeの魚は全世界の温・熱帯域の外洋から3種ほどが知られているが,分類学上未解決な点も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミツマタヤリウオ」の意味・わかりやすい解説

ミツマタヤリウオ
みつまたやりうお / 三又槍魚
black dragonfish
[学] Idiacanthus antrostomus

硬骨魚綱サケ目ミツマタヤリウオ科の海水魚。太平洋の深海から採集されており、日本近海では太平洋岸沖、小笠原(おがさわら)諸島沖などで採集されている。体は黒くて細長く、鱗(うろこ)がない。雌雄の体長差が大きく、雌は40センチメートルほど、雄は5~7センチメートルである。雌は背びれ54~66軟条、臀(しり)びれ28~43軟条、腹びれ6軟条で、体の前半部に位置する。雄には腹びれはない。また、雌には下顎(かがく)に長いひげがあるが、雄にはない。雌雄とも腹部に発光器が並び、その数は20個を超える。幼魚では目が長い柄の先について特異な形をしているが、成長とともに柄は短くなる。近縁種にナンヨウミツマタヤリウオI. fasciolaがあり、太平洋、インド洋大西洋の熱帯・亜熱帯海域の深海から知られている。

[上野輝彌]

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