ミナミキントキ(読み)みなみきんとき(その他表記)arrowfin bigeye

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミナミキントキ」の意味・わかりやすい解説

ミナミキントキ
みなみきんとき / 南金時
arrowfin bigeye
[学] Priacanthus sagittarius

硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。神奈川県、三重県、高知県、鹿児島県、沖縄県の太平洋沿岸、および南シナ海、北オーストラリア、サモアレユニオン島、紅海など西太平洋とインド洋に広く分布する。体高は楕円(だえん)形でよく側扁(そくへん)する。体高は体長の38.1~43.2%。尾柄(びへい)は細長い。目は大きく、眼径は吻長(ふんちょう)よりすこし長い。頭長は眼径の2.1~2.4倍。口は大きく、斜位で、下顎(かがく)は上顎より突出する。上顎の後端は目の前3分の1に達する。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも同様の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁と下縁には微細な鋸歯(きょし)があり、隅角(ぐうかく)部には体側鱗(りん)の2倍以下の短い棘(きょく)が1本ある。鰓耙(さいは)は上枝に5本、下枝に17~19本。頭部と体は小さくてはがれにくい櫛鱗(しつりん)で完全に覆われる。側線有孔鱗数は62~72枚。背びれは10棘13~14軟条。棘部と軟条部の間には欠刻(切れ込み)がない。臀(しり)びれは3棘13~15軟条。背びれと臀びれの棘は後方に向かって長くなり、軟条部は高く、その高さはそれぞれの基底長に等しい。腹びれの先端は臀びれ棘部に達する。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)。体色は銀赤色で、虹彩(こうさい)は桃色~鮮赤色。背びれ、臀びれおよび尾びれは桃色で、鰭膜(きまく)に赤褐色の斑点(はんてん)があり、尾びれのものはやや不鮮明。背びれ第1~第3棘の鰭膜の先端に黒い斜めの斑紋がある。胸びれ淡色。腹びれの基部内側に黒斑が一つある。水深60~200メートルの岩礁やサンゴ礁域、ときにはさらに外域に生息する。夜に活発に活動し、甲殻類や魚類を食べる。おもに釣りで漁獲されるが、ときには稚魚が底引網に多量に入ることがある。釣りあげたときに口から悪臭を発することから、沖縄ではイキグサラーとよぶ。全長は35センチメートルほどになる。肉は柔らかい白身で、煮つけ、塩焼きなどにする。学名sagittarius英名のarrowfin(矢のひれ)は、背びれと臀びれの軟条部が高く、矢のように見えることに由来する。

[尼岡邦夫 2023年10月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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