ミノカサゴ(読み)みのかさご(英語表記)butterflyfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミノカサゴ」の意味・わかりやすい解説

ミノカサゴ
みのかさご / 蓑笠子
butterflyfish
[学] Pterois lunulata

硬骨魚綱カサゴ目フサカサゴ科に属する海水魚。北海道南部から太平洋の熱帯域の島々を経て、オーストラリア、紅海にまで広く分布する。背びれ胸びれは著しく長く伸び、各鰭条(きじょう)は基部でのみ膜でつながる。胸びれの後端は尾びれ基底を越える。胸びれの鰭条はまったく分枝しない。目の上方および上顎(じょうがく)の直上にそれぞれ短い皮弁がある。体は淡赤色で、多くの黒褐色の横帯が走る。各ひれにも同色の帯状斑(はん)がある。頭部腹面と胸びれの前方域には斑紋がない。背びれと胸びれを広げて優美に泳ぐので、観賞魚として人気がある。口を突出させて魚をすばやくのみこむ。背びれ、臀(しり)びれ、腹びれの棘(とげ)には毒性が強い毒腺(どくせん)があり、刺されると激しく痛み、重体になることもあるが、死ぬことはない。痛み止めにはアンモニアは効果がなく、ぬるま湯の中で患部をもむと痛みが早くとれる。沿岸や内湾の岩礁域にすみ、全長30センチメートルぐらいになる。産卵期は九州では8月ごろ、卵は寒天性物質に包まれて産出され、海面を漂う。

 近縁種のハナミノカサゴ、ネッタイミノカサゴ、キミオコゼなどとは目の上方の皮弁が著しく短いことで簡単に区別できる。いずれも水族館などで観賞用として飼育される。

[尼岡邦夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ミノカサゴ」の意味・わかりやすい解説

ミノカサゴ (蓑笠子)

カサゴ目フサカサゴ科ミノカサゴ属の海産魚の総称またはそのうちの1種を指す。胸びれや背びれが長くのび,蓑(みの)をかぶったように見えることに由来した名称。ミノウオ対馬),ミノオコゼ(鹿児島)ともいう。英語では近縁種にbutterfly fish,あるいはtiger fishの名がついている。日本近海にはミノカサゴ,ネッタイミノカサゴ,キミオコゼ,ハナミノカサゴの4種のミノカサゴ属の魚がいる。ミノカサゴPterois lunulataは中部以南の各地,太平洋の熱帯諸島,さらにオーストラリア,紅海にまで分布し,沿岸の岩礁地帯に生息する。全長30cmに達する。背びれと胸びれが延長し,各棘条(きよくじよう)が深く切れ込んでいる。体は淡赤色で多くの黒褐色横帯がある。背びれのとげに毒腺があり,刺されると激しく痛む。このためマテシバシ(三重県浜島)の名もある。卵生で産卵期は長崎近海では8月ころ。卵は寒天状の物質に包まれて産み出される。大きい背びれと胸びれを広げてゆっくりと泳ぐ様が優美なので,水族館での観賞魚として欠かせない。肉は惣菜用として利用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミノカサゴ」の意味・わかりやすい解説

ミノカサゴ
Pterois lunulata

カサゴ目フサカサゴ科の海水魚。全長 35cm内外。体のすべての鰭が大きく,それらのとげの間の膜は深く切れ込んでいる。眼の上に眼上棘と短い皮弁がある。体は淡赤色で黒褐色の横帯がある。胸鰭,腹鰭も淡赤色で,黒褐色斑点が 5~6列ある。鰭のとげに毒腺があり,刺されると非常に痛い。卵生。北海道以南,インド・太平洋に分布し,沿岸の岩礁域にすむ。食用とされるほか,観賞用として飼育されることもある。

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百科事典マイペディア 「ミノカサゴ」の意味・わかりやすい解説

ミノカサゴ

フサカサゴ科の魚。地方名マテシバシ,ミノウオなど。全長30cmに達する。背びれの棘(きょく)条が長く,条間の膜は深く切れ込む。胸びれも長いが,各軟条は分岐しない。本州中部以南,南太平洋を経て紅海まで分布,沿岸の岩礁底近くにすむ。毒腺のある背びれに刺されると痛い。惣菜(そうざい)用。近縁種にハナミノカサゴ,キミオコゼなど。

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