ミリ波通信(読み)ミリはつうしん(その他表記)millimeter-wave communication

改訂新版 世界大百科事典 「ミリ波通信」の意味・わかりやすい解説

ミリ波通信 (ミリはつうしん)
millimeter-wave communication

周波数30~300GHzのミリメートル波を用いた通信。一般的には空間を用いる無線通信方式と導波管を用いるミリ波導波管伝送方式に区分される。前者については,酸素吸収帯が55~65GHz帯に存在するほか,水蒸気圧や降雨の影響を著しく受けるので,その周波数帯を用いた地上無線は大気による電波減衰が多く,近距離通信に限定される。1983年日本において,50GHz帯の簡易無線局が許可され,手軽に高速データ(約16メガビット/s)やアナログテレビジョン信号の伝送などに用いられている。到達距離は降雨減衰の確率により変わるが1~7km程度といわれる。このほか無線方式は大気のない宇宙基地間の通信用などに利用が考えられている。一方,導波管を用いる有線方式は,大容量伝送を目的として,1960年代に電電公社茨城電気通信研究所,アメリカのベル電話研究所等で研究され,日本では43~87GHz帯を用いて72年には水戸~研究所間23kmの実験回線が完成した。線路は内径51mmの円形導波管(らせん形を含む)で,150mm径鋼管で保護し埋設され,400メガビット/sの高速パルス伝送を実現した。ミリ波導波管伝送はアメリカ・ニューメキシコ州ソコロの国立電波天文台において,電波天文の信号伝送用として27の大型アンテナと観測センターとを結ぶ61kmの区間において実用化されたが,導波管を曲げると伝送損失が増加するという困難があるので,80年代に入り急激に進歩した光ファイバーを利用する光通信にとって代わられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミリ波通信」の意味・わかりやすい解説

ミリ波通信
みりはつうしん
millimetric wave communication

周波数範囲が30~300ギガヘルツ、すなわち波長が1~10ミリメートルの電磁波を用いた通信をいう。ミリ波帯においては、大気分子による吸収損失、雨による吸収および散乱損失がきわめて大きいため、アンテナを用いた空間伝搬による通信はごく近距離に限られるが、伝搬媒体に導波管を用いることによって、中継間隔が15~40キロメートル程度の低損失伝送方式が実現可能である。また、ミリ波帯は周波数が高いので、毎秒数十ギガビット、音声換算数十万回線の伝送が可能である。しかし、導波管によるミリ波通信は敷設コストが高く、光ファイバー通信の実現により、伝送容量の点でも優位性を失ったため、現在では通常の通信には使用されていない。

 なお、波長がもうすこし長い周波数範囲(10~30ギガヘルツ)を用いた通信を準ミリ波通信とよび、アンテナを用いた空間伝搬方式が実用化されている。伝搬距離が最大で数キロメートルと制限があるため、現在では移動通信基地局と通信センター間や、都市のビル間での専用回線として普及している。

坪井 了・三木哲也]

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百科事典マイペディア 「ミリ波通信」の意味・わかりやすい解説

ミリ波通信【ミリはつうしん】

ミリ波搬送波とする通信方式。空気中の伝搬は吸収,散乱を受けるので無線通信では近距離に限られ,有線では導波管によって伝送する。多重通信に利用すればきわめて多数の通信路が得られるが,光通信の普及により衰退した。

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