日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミリ波通信」の意味・わかりやすい解説
ミリ波通信
みりはつうしん
millimetric wave communication
周波数範囲が30~300ギガヘルツ、すなわち波長が1~10ミリメートルの電磁波を用いた通信をいう。ミリ波帯においては、大気分子による吸収損失、雨による吸収および散乱損失がきわめて大きいため、アンテナを用いた空間伝搬による通信はごく近距離に限られるが、伝搬媒体に導波管を用いることによって、中継間隔が15~40キロメートル程度の低損失伝送方式が実現可能である。また、ミリ波帯は周波数が高いので、毎秒数十ギガビット、音声換算数十万回線の伝送が可能である。しかし、導波管によるミリ波通信は敷設コストが高く、光ファイバー通信の実現により、伝送容量の点でも優位性を失ったため、現在では通常の通信には使用されていない。
なお、波長がもうすこし長い周波数範囲(10~30ギガヘルツ)を用いた通信を準ミリ波通信とよび、アンテナを用いた空間伝搬方式が実用化されている。伝搬距離が最大で数キロメートルと制限があるため、現在では移動通信基地局と通信センター間や、都市のビル間での専用回線として普及している。
[坪井 了・三木哲也]