日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムワンギ」の意味・わかりやすい解説
ムワンギ
むわんぎ
Meja Mwangi
(1948― )
ケニア、キクユ・ランド出身の小説家。本名はデイビッドで、メジャは子供のころ母が付けた呼び名。キクユ主導のマウマウ戦争の渦中で育った。ケニヤッタ・カレッジを卒業後、ナイロビ大学の受験に失敗し、フランス・テレビの音響技師となり、のちにブリティッシュ・カウンシルに勤めた。1970年代から映画産業に関係しながら、創作活動に打ち込んだ。そのため、彼の小説のなかに、映画的手法が散見される。その後、1990年にイギリスのリーズ大学で学士号を取得した。処女作でケニヤッタ文学賞受賞作『早くこの俺(おれ)を殺せ』(1973)やロータス賞受賞作『リバーロードを下りて』(1976)、『ゴキブリのダンス』(1979)で、独立後日の浅いケニアの性急な近代化がもたらす歪(ゆが)みの犠牲となって社会の底辺でうごめくあぶれ者たちの生きざまを描きながら、ケニア社会の腐食の構造を浮き彫りにし、一躍若手のホープにのし上がった。ほかにマウマウ戦争をテーマとした『猟犬に食わせる死肉』(1974)と『死の味』(1975)、密猟者を追う森林警備官の苛烈(かれつ)な戦いを描いた大衆娯楽サスペンス小説で映画化された『密林の追跡者たち』(1979)、『悲しみの糧(かて)』(1987)、『飢えの武器』(1989)、『シャカの復活』(1989)、『風を求めて』(1990)、児童向けの物語『犬のジミー』(1990)、『小さな白人』(1990)、『狩人の夢』(1993)などがある。のちドイツに渡り、詩作にも意欲をみせている。
[土屋 哲]