モノドラマ(読み)ものどらま(英語表記)monodrama

翻訳|monodrama

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モノドラマ」の意味・わかりやすい解説

モノドラマ
ものどらま
monodrama

たった一人の俳優が演ずる演劇、一人芝居。この意味では、古代ローマのパントミモスにその例がみられ、下っては18世紀後半ドイツに俳優・劇作家ブランデスが出て流行する。音楽の伴奏で合唱隊が大筋を物語り、俳優が身ぶりによるパントマイム視覚化していくのが一般であった。しかし、今日いうところのモノドラマはもうすこし内面性を重視し、一人の人物の心理的変化を克明に描き出すドラマをさす。こうしたモノドラマ論に影響を与えた人に、20世紀初頭のロシアの詩人エウレイノフがいる。彼は、登場人物の内的体験を観客が深く自らの体験とすることを演劇の本質とみなし、モノドラマこそ演劇の本来的あり方だと論じた。

[高師昭南]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モノドラマ」の意味・わかりやすい解説

モノドラマ
monodrama

1人の俳優によって演じられる劇。俳優 J.ブランデス (1735~99) によって,1775~80年頃ドイツで流行した。近代では A.チェーホフの『煙草の害について』 (1886) や J.コクトーの『声』 (1930) が有名。特殊な例としてはロシアの劇作家 N.エフレイノフの作品がある。彼は,戯曲は内的自我投影であるべきであり,一人の人間はさまざまな実体をもっているのであるから,そのそれぞれを登場人物に置き換え,数人の俳優が演じることによって,主観的な存在としての人間は客観化され,それぞれの観客との結合が生れるという独自の「モノドラマ論」を展開した。

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