知恵蔵 「モノ消費とコト消費」の解説
モノ消費とコト消費
日本では高度経済成長期が始まった1950年代以降、三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビ)や3C(乗用車、クーラー、カラーテレビ)など、モノをそろえることが消費の一つの基準となっていた。しかし、90年代初頭のバブル経済崩壊以降、インターネットの普及なども相まって人々の価値基準が多様化、細分化していき、「コト」を重視した消費行動が見られるようになった。
内閣府の資料によると、1世帯当たりの年間消費支出総額は、1984年に32.6%だったサービスへの支出割合は、2007年には41.5%となり、モノからコトへ支出がシフトしている。具体的なサービス支出の内訳では、住居や教養娯楽(旅行や習い事の月謝など)、通信の割合が大きく増えた。
ジェイアール東日本企画が15年、首都圏の18~34歳(高校生を除く)の男女に行った調査では、「欲しいモノがパッと思い浮かばない・即答できない」という問いに約5割が「当てはまる」と回答した。更に、習い事や留学などの「学び」にお金を費やすのは有益かという問いには回答者の7割以上、エステやジムなど「体のメンテナンス」には6割以上が「当てはまる」と答えている。
消費者がコトにお金をかける傾向が出てきたことから、企業などの売り手側もコトに焦点を当てたサービスの開発や、商業施設の展開を進めている。一例には、駅構内への理髪店や英会話スクールなどのサービス業を含めた多様な業種・業態を展開する「駅ナカ」開発や、ファッションショーやセミナー、体験会などが行えるスペースを多く設けた商業施設の展開が挙げられる。鉄道会社も、移動時間を楽しめる観光列車や豪華寝台列車の開発に力を入れる。夜行バスでも17年1月以降、完全個室やパーティションで座席を区切り、快適に過ごせる車両が続々と登場している。
(南 文枝 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報