鑑賞(読み)かんしょう

日本大百科全書(ニッポニカ)「鑑賞」の解説

鑑賞
かんしょう

芸術作品などの美的な対象を、聴覚や視覚を通して自己のなかに受け入れて深く味わい、その美的な性質や価値を判断・評価する心の働きをいう。このように、外にある美的な価値を内に受け入れる賞は、内にある美的な感情を外に表す「表現」のように、そのすべてが能動的な美的体験ではない。しかし鑑賞においても、直接的かつ積極的に美的な対象とかかわりあい、自己の心で受け止めてそれと一体になり、そのなかに具現化されている美的なものを自らみいだしていくということから、ある意味の能動性が含まれる。そのために鑑賞はまったくの受動的な美的体験であるとはいえない。

 美学においては、鑑賞の同義語として観照の語が用いられる。しかし鑑賞には、美的な対象を客観的に静かに見つめる心の態度である観照とは別に、積極的に自ら対象の美的な価値を評価するという意味が含まれているために、主として芸術に対して鑑賞という語が適用される。

川原 浩]

特徴

鑑賞においては、主観的に感じる面と客観的に知る面の両方が含まれる。前者は、自己の心に直接訴えかけて感覚的、感情的に楽しんで鑑賞することであり、後者は価値を評価しつつ知性的に鑑賞することである。したがって、両者が融合統一された鑑賞が、そのもっとも望ましいあり方であると考えることもできる。鑑賞においてまず重要なことは、対象から直接に受ける美的な感動を、自己の心によって主体的に受け止めることである。

 音楽、詩、絵画そして彫刻などの芸術作品と直接にかかわりあい、その美的なものを受け入れる芸術鑑賞は、芸術美という価値現象そのものを認識する心的作用であるから、あくまでも芸術それ自体のために行われなければならない。芸術の表題的な興味、または象徴的な思想などに注目した鑑賞は、芸術鑑賞の本質的なあり方とはいえない。

 したがって、芸術に関する事実や情報などの知的な教養は、直観された芸術美によって生起する美的な感動と結び付いてこそ意味があるといえる。つまり、芸術に関する歴史的、思想的または理論的な知識は、芸術美の享受を助けるものとして役だつものである。このことは、芸術教育における鑑賞活動が、芸術の理論や芸術史などのような、各種の事実に基づいた科学的な考察と切り離して行われるべきだと主張されるゆえんである。人間の直観による芸術鑑賞は、人間の精神生活を豊かにし、必然的に生きることの意味を充実させるものである。

[川原 浩]

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デジタル大辞泉「鑑賞」の解説

かん‐しょう〔‐シヤウ〕【鑑賞】

[名](スル)芸術作品などを見たり聞いたり読んだりして、それが表現しようとするところをつかみとり、そのよさを味わうこと。「名曲を鑑賞する」「鑑賞力」
[類語]観賞玩味見る

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精選版 日本国語大辞典「鑑賞」の解説

かん‐しょう ‥シャウ【鑑賞】

〘名〙 芸術作品などのよさを見きわめ、味わうこと。翫賞(がんしょう)
随筆・山中人饒舌(1813)上「世称鑒賞精覈者、引証古今、鑿々弁証」

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普及版 字通「鑑賞」の解説

【鑑賞】かんしよう(しやう)

作品の価値を見定めて賞美する。北斉王倹碑文は、端にしてに臨み、鑑賞昧(くら)きこと無し。

字通「鑑」の項目を見る

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