改訂新版 世界大百科事典 「モリネ」の意味・わかりやすい解説
モリネ
Jean Molinet
生没年:1435-1507
フランスの詩人。ブルゴーニュ公国の年代記編纂官。フランドルの出身で,パリ大学で学士になったあと,ピカルディー系のルモアーヌ学寮で秘書を務めながら,頌詞を作ってブルゴーニュ公に近づき,やがてG.シャトランの後を襲って公国の年代記編纂官となる。1477年の公国消滅後は,公の息女マリーの夫,マクシミリアン大公の下で職務を続ける一方,妻を失ってからは聖職禄にもあずかり,詩作にいそしむ。詩人モリネは,〈大押韻派〉ないしは〈大修辞家〉と,誤って名づけられている宮廷詩人群の代表格と目され,自分が出仕する宮廷の文化的優位を誇示する演出家としての役割を担い,比類なき超越的技巧を駆使して詩をものし,後続の詩人たちの目標となった。その詩は,ボッシュやブリューゲルの絵に一脈通ずるものをもっている。作品には《魚と肉の論争》《いくさの遺言》《軍神の神殿》などがある。
執筆者:細川 哲士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報