改訂新版 世界大百科事典 「モンサンミシェル修道院」の意味・わかりやすい解説
モン・サン・ミシェル修道院 (モンサンミシェルしゅうどういん)
Abbaye du Mont-Saint-Michel
フランス北西部,ノルマンディーとブルターニュとの間にはさまれたサン・マロ湾の南東,モン・サン・ミシェル湾上の小島にある修道院。伝承によれば708-710年アブランシュの司教オーベールが,自ら幻視した大天使ミカエル(サン・ミシェル)の命令で,ここに礼拝堂を建てたのが起源という。ノルマンディーのノルマン人は10世紀初頭キリスト教化するが,966年ノルマン人修道士がここに住みつき,ベネディクト会修道院を建設した。1023-34年に新教会堂が建築され,12世紀には城壁がめぐらされて城砦としての役割をも兼備した。中世を通じてここは西欧の重要な精神的中心および巡礼地となり,崇敬の的となったが,百年戦争では要塞となり,フランス革命後は一時牢獄と化した。現在,修道士は在住していないが,ヨーロッパ随一といわれる優雅な姿は多くの見学者を集めている。
執筆者:今野 國雄
修道院の建築
中心に,地下祭室をなすカロリング期の教会堂,ノルマン様式の身廊(11~12世紀),フランボアイヤン様式の内陣(15世紀半ば~16世紀初め)からなる教会堂が位置し,その周囲をメルベイユMerveilleと呼ばれる13世紀の重層的修道院建築(階下に無料宿泊所,貯蔵庫,その上に騎士の間,賓客の間,階上に回廊,食堂,寝室)と13~15世紀の軍事施設(城塞,衛兵室,大階段など)が取り囲む。
執筆者:岸本 雅美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報