ヤツシロガイ (八代貝)
Tonna luteostoma
ヤツシロガイ科の巻貝。八代海でよくとれたというのでこの名がある。殻はやや薄く球形の大型で高さ19cm,径16cmに達する。巻きは低く7層,各層は膨らみ,最後の巻きは非常に大きく殻高の大部分を占める。殻表には低くて幅の広い肋があり,肋の間は狭い。肋上に濃褐色と黄白色の斑が交互にならぶ肋と,斑の明りょうでない肋とがある。この模様からヤマドリガイという地方もある。殻口は広くて円く,外縁は殻表の肋に応じて屈曲する。ふたを欠く。北海道以南~熱帯太平洋,インド洋まで広く分布し,水深5~50mの細砂泥底にすみ,ウニやナマコを食べる。産卵期は11~2月に小さい卵が縦横にならんだ扇形の平たい透明の卵囊を産む。肉は長崎地方で食用にされ,殻は貝細工の材料となる。
ヤツシロガイ科Tonnidaeの貝のベリジャー幼生の左右の泳翼(えいよく)にはおのおの2本の細長い突起がある。この幼生は100日以上も浮遊生活をし遠くまで移動することができる。
執筆者:波部 忠重
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ヤツシロガイ
やつしろがい / 八代貝
tun shell
[学] Tonna luteostoma
軟体動物門腹足綱ウズラガイ科の巻き貝。北海道南部から九州、および西太平洋海域に広く分布し、水深5~40メートルの砂底にすむ。殻高19センチメートル、殻径16センチメートルに達し、球形で薄質。螺塔(らとう)は低く、体層は丸く大きく膨らむ。殻表には太くて平たい螺肋(らろく)があり、肋間は狭い。肋上に濃褐色と黄白色の斑(はん)が交互にある個体と、斑のない個体とがあり、その斑紋から古名はヤマドリガイともいった。殻口は大きく広く、下端に水管の湾入があり、臍孔(へそあな)は著しい縫帯で囲まれている。蓋(ふた)はない。肉食性でウニ、ヒトデなどを食べる。冬季に、透明で扁平(へんぺい)な帯状の卵嚢(らんのう)を産む。肉は食用となり、殻は貝細工の材料にされる。
[奥谷喬司]
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ヤツシロガイ
Tonna luteostoma; gold-mouthed tunshell
軟体動物門腹足綱ウズラガイ科。殻高 19cm,殻径 16cmに達する。殻は球形,螺塔は低く,体層は丸く大きい。殻表には太くて低い肋があり,肋間は狭い。肋上には濃褐色と黄白色の斑が交互にあり,その斑紋がヤマドリの羽の模様に似ていることからヤマドリガイともいう。殻口は大きく広く,下端に水管溝の湾入がある。ふたを欠く。軟体は乳白色地に褐色のまだら模様。触角は長く,なかほどに眼が位置する。触角の間には偽口があり,餌を食べるときにはそこから吻が伸びる。北海道南部から九州,熱帯西太平洋からニュージーランドまでの水深5~40mの細砂底にすみ,ナマコなどをまるのみにして食べる。冬季透明,ゼラチン質で扁平な扇形の卵嚢を産む。肉は食用,殻は貝細工の材料となる。
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「ヤツシロガイ」の意味・わかりやすい解説
ヤツシロガイ
ヤツシロガイ科の巻貝。高さ19cm,幅16cmになり,殻は薄質。黄褐色の殻皮でおおわれ,肋上に濃褐色と黄白色の斑がある。蓋はない。北海道南部〜九州,西太平洋,インド洋の浅海の細砂泥底にすみ,ウニやナマコなどを食べる。11〜2月に透明な扇形の卵塊を産む。肉は食用,殻は貝細工に用いられる。八代海で多くとれたのでこの名がある。
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