ヨットの用語(読み)よっとのようご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨットの用語」の意味・わかりやすい解説

ヨットの用語
よっとのようご

アメリカズ・カップ America's Cup
 ヨット界最大の国際レースの名称。1851年イギリスヨットレースでアメリカのスクーナー型ヨット「アメリカ号」が獲得した優勝カップの呼称にちなむ。1870年から始まり、2017年までの間に35回行われ、現在も続いている。マッチ・レース(2隻で勝負を競う)形式で行われる(36回大会は2021年にニュージーランドで開催予定)。

オーシャン・レース oceanic race
 管理水面に設置したマーク(ブイまたは浮標(ふひょう))を回航するレースと異なり、湾、海峡大洋などを渡って行われるレース。ワールドセーリング・外洋特別規定(OSR)では、800マイルを超す外洋レースを「オーシャン・レースOcean Race」という。

落とす おとす
 ベアアウェイbear away、または「ベアする」ともいう。船首風下の方に向けて帆走すること。「切り上がる」参照。

オフショア・レース offshore racing
 外洋で行われるレースの総称。OSRでは、大会のカテゴリーとして、レースを0~4のカテゴリーと、インショア・レース用およびインショア・レース・ディンギー用の7段階に分けている。このうち0~4のカテゴリーがオフショア・レースである。カテゴリー0は「世界一周・大洋横断のようなレースで気温・水温が5℃以下となる水域を通過し、深刻かつ緊急な事態でも外部からの救援が期待できないことがあるようなレース」をいい、カテゴリー4は「通常日中に行われ、比較的温暖な海岸近くで、または囲まれた水面で行われる短い距離のレース」としている。

海上衝突予防法(かいじょうしょうとつよぼうほう)
 海上交通の安全のために、船の航行に関する方式を規定した法律。このなかに、帆船が行き会ったときに、どちらがよけるかの規定がある。

ガフ gaff
 縦帆の上部を張り出すための帆桁(ほげた)。

切り上がる きりあがる
 ラフィングluffing、または「ラフする、上る」ともいう。艇首を風上の方に向けて帆走すること。「落とす」参照。

キール keel
 船の背骨に相当する構造物。ヨットではこれに重錘(じゅうすい)(バラスト)をつけて復原力を稼いだり、横流れを防いだりしている。

クリンカー・ビルト clinker built
 船の外板をキールわきから船べりへとだんだんに重ねて張る作り方。スカンジナビア地方に多く、鎧(よろい)張りともいう。

クルーザー cruiser
 レースを目的とせず、クルージング(巡航)を主目的としてつくられた船艇で、居住できる設備を備えている。日本ではクルーザーというと一般にセーリング・クルーザーをさすことが多いが、モーターボートも含まれる。巡洋艦という意味もある。

クルージング cruising
 巡航すること。レーシングとは違い、移動することを楽しむ航海。

クロースホールド close-hauled
 船首を風上にいっぱいに向けて有効に帆走すること。単に「クロス」ということもある。「順走(フリー)」参照。

航路権(こうろけん)
 海上で2艇が衝突の危険を感じたとき、相手をよけさせ、自艇はコースを維持しうる権利。

国際レーティングシステム International Rating Systems
 ワールドセーリングでは、船の船型等によりその船に一定の数値を与える計測システムである国際レーティングシステムとして、「IRC」(RORC:Royal Ocean Racing ClubとUNCL:Union Nationale pour la Course au Largeが作成しているレーティングシステム)ならびに「ORC Club」および「ORC International」(ORC:Offshore Racing Congressが作成しているレーティングシステム)の三つを認定している。

ジェネカー gennaker
 スピネーカーの一種で非対称スピンともよばれている。スピネーカーポールを使用せずに展開することができる。

シート sheet
 帆を操るために帆の下部につけたロープ。

ジブ jib
 マストの前方に張る三角形の帆。ジブセール。

ジャイビング jibing(アメリカ英語)、gybing(英語)
 風を後ろから受けて、風を受ける舷(げん)を変えること。「タッキング」参照。

順走(じゅんそう)
 クロースホールド(風上に進めようとするときの走り方)以外の走り方。単にフリーfreeともいう。「クロースホールド」参照。

スピネーカー spinnaker
 順風のとき、ヨットが風下・前方に張る半球形の帆。単に「スピン」ともいう。

セーリング競技規則 Racing Rules of Sailing
 略してRRSという。セーリングの国際的な競技規則で、4年ごと(夏季オリンピック開催年の翌年の1月1日)に改訂され、ワールドセーリングが制定している。

センターボード centerboard
 艇のキールを突き抜けて水中に出ている、上げ下げ自由な可動板。艇のリーウェー(横流れ)を少なくするためのもの。差込式(ダガーボード)と巻込式(引込式、回転式)がある。

タイムアラウアンス time allowance
 大きさ・艤装(ぎそう)・クラスの違う艇が競走するとき、艇差による不公平を除くため、各艇に与えるハンディキャップ。

タッキング tacking
 風を前から受けて、風を受ける舷を変えること。「ジャイビング」参照。

ディンギー dinghy
 大型の船舶やヨットなどに積み込まれて足舟の役をするオープンボート。または3~5メートル程度の小型ヨットの総称。

トラピーズ trapeze
 セーリング・ヨットにおいて、復原力を得るため乗員が艇外に乗り出すとき、身体を支えるためマスト上部からとってあるロープ。

ノット knot
 エイトノット、ボーラインノットなどロープの結び目をいう。また船の速力単位で1時間1海里(1852メートル)の速さをいう。

帆走状態(はんそうじょうたい)
 帆船のコースと風向との関係を言い表すことば。

ハンディキャップ・クラス handicap class
 大きさやデザインが著しく異なる船で争うクラス。船は、ある一定のレーティング基準によって計測され、それに応じた時間差が与えられる。

ヒール heel
 艇が横に傾くこと。

フォイリング foiling
 艇の底に水中翼hydrofoilを備え、帆走しだすと艇体が浮上して水面から離れるので艇の造波抵抗がなくなり、高速で帆走する状態をいう。最近のアメリカズ・カップクラス、オリンピック種目であるナクラ17クラスの艇や一部のカイトボードクラスにみられる。

ブーム boom
 帆を広げるため、帆の下縁につけた帆桁。

プレーニング・タイプ planing type
 水上を滑走するように走る軽い型の艇。

マルコニーリグ Marconi rig
 マルコニー無線塔のように高いマストをもち、ガフのないメインセールの艤装。イギリスでは「バミューダリグ」と称されている。

ミズンマスト mizzen mast
 ケッチ、ヨールなどでメインマストの後ろにあるマスト。

モノタイプ monotype
 同一設計で同じ仕様書に従ってつくられた艇。単一型またはワンデザインに同じ。

リーウェー leeway
 風圧差ともいう。帆船は船の向く方向と、実際に進む方向との間に差がある。これは、船が風に押されて、風下に流されるからで、この二つの方向の差をいう。

リグ rig
 帆、索具などを装備すること。帆装または艤装ともいう。

レーティング・クラス rating class
 定格規格級。船の長さ・幅・帆面積などを一定の公式に入れて算出した数値を、その船の等級(レーティング)といい、その数値が同じものを、同じレーティングの艇という。このような規制を受けている艇をレーティング・クラスという。2.4mR、12mRクラスなどがある。

レストリクテッド・クラス restricted class
 デベロップメント・クラスdevelopment classともいう。限定規格級。艇の長さ、幅、帆面積などにある程度の制限を設け、その範囲内で自由に設計して建造された艇でレースを行うクラス。International-14(14フッター)やモスがある。

ワールドセーリング World Sailing
 セーリングに関するすべてのスポーツ競技を統括する国際組織。本部はイギリスにある。

ワンデザイン・クラス one design class
 まったく同一規格の艇で争われるクラス。数多くの階級があるが、小型のワンデザイン・クラスはとくに人気が高く、テクノ293級、OP級、レーザー級、420級、スナイプ級、470級、J24級などがある。現在オリンピックで採用されているクラスは、すべてこのクラスである。

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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