改訂新版 世界大百科事典 「リーチュエ」の意味・わかりやすい解説
リーチュエ
lechwe
Kobus leche
偶蹄目ウシ科の哺乳類。アフリカ南部のナミビア,ボツワナ,コンゴ民主共和国,ザンビアにかけての沼地にすむ中型のアンテロープ。体型はウォーターバックに似るが小さく,体色が明るい栗色。四肢にはよく目だつ黒色斑がある。腹面は白色。雄のみにある細長いみごとな角は,ゆるくS字形に湾曲する。体長130~180cm,肩高85~105cm,尾長30~40cm,体重60~120kg。水場近くに大きな群れですみ,深さ60cmくらいまでの水に入って水草や湿性植物を食べ,敵に追われると陸に向かわず,水に入るなどアンテロープとしては水生の傾向が強い。泳ぎも巧みである。休むときだけ乾燥した高みに上がる。群れの大きさはふつう50頭くらいまでだが,それより大きな大群もまれではない。交尾期は11~1月で,雌は8ヵ月の妊娠期間のあと,7~9月に1子を生む。過剰な狩猟と生息地の破壊のために急激に減少しつつあり,国際自然保護連合(IUCN)では“絶滅の危険がある動物”に指定している。近縁種にはスーダン南部からエチオピア西部の沼地に分布するナイルリーチュエ(Nile lechwe)K.megaceros,サハラ以南のサバンナにすむウォーターバック,アフリカ中部のサバンナにすむプークーなどが知られる。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報