マメ科のハウチワマメ属(ルピナス属ともいう)Lupinusの植物の総称で,ルーピンともいう。温帯を中心に世界各地に200~300種あるといわれ,多くは一・二年草であるが,中には多年草や低木となる種もある。一部は飼料や緑肥,観賞用,食用などにするために栽培される。葉は細長い小葉が5~15枚掌状に集まる複葉で,茎の先に多数の花を春に房状につける。一般に有毒のアルカロイドを含むが,含有量は種や品種によって変異が大きい。飼料・緑肥用とするものに,地中海沿岸地域原産のキバナルーピンL.luteus L.(英名yellow lupine,キバナハウチワマメともいう)やアオバナルーピンL.angustifolius L.(英名blue lupine,narrowleaved lupine。ホソバルーピンともいう),北アフリカ,シチリアからイスラエル地域に野生するシロバナルーピンL.albus L.(英名white lupine)などがあり,豆を除毒して食用とするものにパレスティナからエジプト原産のエジプトルーピンL.termis Forsk.(英名Egyptian lupine)やシロバナルーピンがある。また,花を観賞するために栽培されるものにキバナルーピンや南ヨーロッパ原産のカサバルーピンL.hirsutus L.(英名blue lupine),北アメリカ西岸(ワシントン州からカリフォルニア州)原産で多年生のシュッコンルーピンL.polyphyllus Lindl.(英名Washington lupine)などがある。
執筆者:星川 清親
改良種ラッセル・ルピナスRussell Lupinusはイギリス人ジョージ・ラッセルが1937年に作出したもので,シュッコンルーピン(シュッコンルピナスともいう)を片親とする雑種といわれるが,花穂が長く花色が豊富である。オランダで改良されたミナレットMinaretteは花色が豊富で,高さ30~40cmの矮性(わいせい)種で,鉢植え,花壇向き。宿根草ではあるが秋まき一年草として取り扱い,最近では市販品が多い。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
マメ科(APG分類:マメ科)ルピナス属の総称。一、二年草および多年草。和名は、花のつき方からノボリフジ(登藤)、また葉の形からハウチワマメ(葉団扇豆)という。各種とも長柄のある掌状複葉を根生し、花茎を抽薹(ちゅうだい)して総状花序をつくる。旗弁は立って両縁(へり)は反転し、翼弁は内に巻いて竜骨弁を包囲する。花色は黄、紫、青、白、桃紅、複色などである。北アメリカ、中南米、アフリカ、地中海沿岸に広く分布し、約300種知られる。飼料、花壇、切り花に利用する。よく栽培されるものに次の各種がある。
キバナルピナス(キバナハウチワマメ)L. luteus L.は南ヨーロッパ原産で、高さ40~50センチメートル、秋播(ま)きで、3~5月に黄色花を開く。切り花用としての栽培が多い。カサザキルピナスL. micranthus Guss.(L. hirsutus L.)も南ヨーロッパ原産で、高さ50~60センチメートル。秋播きで、4月ころ、青紫色または白色花を開く。ハートウェギー(ニシキハウチワマメ)L. hartwegii Lindl.はメキシコ原産で、高さ60~90センチメートル。秋播きで、5~6月に開花する。花色は青紫、白、桃、紅色などで、本属中もっとも美しい。近年よく栽培されるようになったラッセルルピナス(タヨウハウチワマメ)L. polyphyllus Russell hort.はポリフィルスをイギリスのラッセルが改良した品種群で、高性の多年草。黄、赤、青色花がある。
栽培は、一、二年生種は秋播き、多年生種は春播きである。種子は大形で、直根性で移植を嫌うので、直(じか)播きして間引きするか、苗床に播き、本葉2枚くらいの小苗のうちに定植する。株間は一、二年草で10~15センチメートル、多年草で20~30センチメートル。あまり土質を選ばずによく生育するが、夏季に冷涼な地帯がよい。
[吉次千敏 2019年11月20日]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…栽培の歴史の古いエンドウは種子を食用とする以外に,キヌサヤ系の野菜利用品種群が分化している。また観賞用の地中海域原産のルピナス(ルーピン)類にも豆が食用とされるものがある。
[豆類の調理]
豆類の種子が生食されることは,ほとんどない。…
※「ルピナス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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