改訂新版 世界大百科事典 「レプチャ族」の意味・わかりやすい解説
レプチャ族 (レプチャぞく)
Lepcha
ネパールの東端からインドのダージリン,シッキム州にかけて居住するモンゴロイド系民族。推定人口6万。彼らは現居住地域の原住民とされ,とくにシッキムの山や川の名にはレプチャ語に由来するものが多い。しかし17世紀のボーティア(チベット)人の侵入によるシッキム王国の樹立以後,彼らに服属することになり,宗教もラマ教(紅帽派)を奉じ,生活様式もチベット化した。さらに18世紀以降のネパール人の東方進出によって,ますます少数民族と化していった。レプチャとはネパール語で〈愚にもつかないことをしゃべる人〉という意味の蔑称で,彼らはロンパRong-pa(〈渓谷の人〉の意)と自称する。山地斜面にラマ教寺院(ゴンパ)を中心とする小村を形成して居住し,元来は焼畑耕作(陸稲,ソバなど)と狩猟を主たる生業としていた。20世紀にはいってからは,それらに加えて棚田での水稲,毎年作付けする畑での小荳蒄(しようずく)(ショウガ科のElettaria cardamomum Matonの果実で,香辛料に用いる)の栽培を営むようになった。社会組織は父系制の外婚氏族を単位とし,一妻多夫制も広くみられる。
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報