翻訳|lemming
齧歯(げつし)目ネズミ科レミング族Lemminiの哺乳類の総称。大発生した大集団が移動し,海や湖で大量に死に,よく集団自殺の例として引合いにだされる。ユーラシアと北アメリカの中・北部に4属10種が分布。体長7.5~15.7cm,尾長1~2.7cm,体重20~112g。体はハタネズミに似てがんじょうで四肢は短いが,尾がきわめて短い。毛が密生し,耳介は小さく毛に隠れる。体は赤みのある黄褐色に黒褐色の斑のあるノルウェーレミングLemmus lemmus,夏毛は鈍い淡黄色を帯びた赤褐色だが,冬になると全身白色となるクビワレミング属Dicrostonyxなどさまざまである。平地から山地の森林,草原,ツンドラにすみ,地衣類,コケ,草などを食べる。ふつう冬でも繁殖をつづけ,妊娠期間16~23日で年に数回,1産1~13子,平均7.3子を生む。寿命は1~2年。周期的に個体数は大きく変動するが,その原因は気候の周期的な変化により食物量が変動することに基づくといわれるが,まだよくわかっていない。大発生することでとくに有名なのはノルウェーレミングで,1960-61年にも大発生が3回観察されている。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。正式名はノルウェーレミングという。フィンランド、スカンジナビア半島北・中部の山岳地帯に分布し、ツンドラや高山草原にすんでいる。頭胴長13~15センチメートル、尾長0.5~1.9センチメートル、体重約40グラム。夜行性で、地下や雪の下にトンネルを掘り巡らす。草、地衣類、蘚苔(せんたい)類を食べる。泳ぎは巧みであるが、3~4年ごとの大発生のときには、集団で移動して海中に飛び込み、おぼれ死ぬまで泳ぎ続けることで有名である。この大群での移動がみられるのは、爆発的増殖をおこしたときだけで、集団的恐慌状態に陥るものといってよい。しかし、通常年でも春になると低所に下がり、秋には高地に戻る移動を繰り返す。この通常の移動習性からタビネズミの名でもよばれるが、夜行性のためにこれらの移動は人目につかない。年2回、1産2~8子を産む。
このほかレミング属Lemmusには、シベリア地方に分布するシベリアレミングL. sibiricus、アムール地方に分布するアムールレミングL. amurensis、プリビロフ諸島に分布するクロアシレミングL. nigripesなどがある。また、近縁の属としては、北アメリカやユーラシアに分布するクビワレミング属Dicrostonyxなどがある。なお、レミングの名でこれらを総称することもある。
[宮尾嶽雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…哺乳類においても特異な生理・生態的変化をともなう場合のあることが知られているし,集団移動も頻繁に起こる。寒帯に住むレミング(タビネズミ)やユキウサギなどでは,前者は4年の,後者は10年の周期的大発生を繰り返し,これを食うアカギツネやオオヤマネコもそれにつれた周期的な密度変動を示すことが知られているが,温帯や熱帯に住む動物ではそうした周期的な大発生はほとんど見られない。 大発生の原因としては,えさをはじめとする生息条件の好転,天敵や競争種の欠如あるいは活動の低下などが考えられるが,多くの場合,そうした条件の発生は特別な気候条件の到来が契機となるとみられている。…
※「レミング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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