日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタネズミ」の意味・わかりやすい解説
ハタネズミ
はたねずみ / 畑鼠
Japanese meadow vole
[学] Microtus montebelli
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。本州、九州、佐渡島に分布が限られている。頭胴長10.6~12.5センチメートル、尾長3.4~4.6センチメートル、体重35~40グラム。草原、幼齢植林地、堤防、笹原(ささはら)、水田、畑などにすみ、森林が伐採され、草原状の場所ができると亜高山帯や高山帯にも進出する。富士山頂でも採集されている。草食性で緑葉、茎、地下茎などを食べ、冬にカラマツなどの幼木の樹皮や根を食害する。農作物への被害も大きい。草食への適応として大腸や盲腸が発達し、門歯(切歯)、大臼歯(だいきゅうし)ともに無根歯である。脳は相対的に小さい。目や耳介が小さく、尾が短いのは地下生活への適応である。ときに大発生する。低地では夏に繁殖休止期があるが冬にも繁殖し、東北地方や長野県では春から秋に繁殖する。1産2~7子。山間部ではキツネ、イタチ、テン、フクロウ、ヘビ類などが天敵として重要である。新潟、秋田、山形各県の河川流域にみられるつつが虫病は、ハタネズミに寄生するアカツツガムシが媒介し、夏に発生し致死率も高い。一方、草食家畜の栄養生理に関する研究のためのモデルとして、ハタネズミの実験動物化が進められている。
[宮尾嶽雄]