改訂新版 世界大百科事典 「ワタトリカイメン」の意味・わかりやすい解説
ワタトリカイメン
Callyspongia elegans
尋常海綿綱ザラカイメン科の海綿動物。洋服をこすると綿くずなどがよくとれるというのでこの名がある。またトンビノハカマとも呼ぶ。本州中部以南に分布し,浅海の岩礁上に付着しているが,よく海岸に打ち上げられる。体は高さ30cm,幅15cmに達し,扁平なコップ状や扇状で,上端に大きな口が開き,体内は中空である。生きているときは紫色がかった濃褐色であるが,乾燥すると淡褐色に変色する。
体の表面は海綿質繊維が粗い網目をつくり,網目の節のところに繊維が集まって突起になっているためざらざらしている。内面は平滑で径1mm前後の出水孔がたくさん並んでいる。骨片は海綿質繊維の中にあって両端がとがった桿(かん)状体のもののみである。有用種ではない。
→カイメン
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報