ワトソン=クリック模型(読み)ワトソン=クリックもけい(英語表記)Watson-Crick model

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワトソン=クリック模型」の意味・わかりやすい解説

ワトソン=クリック模型
ワトソン=クリックもけい
Watson-Crick model

デオキシリボ核酸 DNA立体構造に対して,J.ワトソンと F.クリックが 1953年に共同で提出した模型のこと。これは螺旋階段状の構造 (二重螺旋) をもち,構造単位であるヌクレオチドが,左右1対ずつ,縦に長くつながり合ったものである。各ヌクレオチドは 塩基-糖-リン酸 の3部分が組合わさったものであるが,塩基に異なる4種類のものがあり (A,G,C,T) ,このうち特定の1対ずつ (A-T,C-G) が対合して,階段の「踏み板」を形成し,糖とリン酸は,縦につながって左右1対の「手すり」となる。このモデルによると,(1) 新たな分子が形成される際には,塩基の対合が離れてから,互いに自分に合う材料を引寄せて新たな二重螺旋を形成するので,忠実な複製増殖が,繰返し可能である,(2) 縦方向に塩基の並び順を考えると (たとえば AGCTAGTC…) ,4種類の塩基から成る分子的暗号となりうる。複製と分子的情報という。以上2点は,遺伝子として要請される性格を満たしているので,それまでも核に局在することなどから遺伝子としての可能性を考えられていた DNAが,遺伝子そのものであることがにわかに絶大な説得力を帯びてきた。このモデルに基づく多数実験が矢つぎばやに企画され,いずれもモデルを支持し,分子生物学時代を確立する主要な動きが,ここから始った。このモデルは DNAのX線回折像の分析データなどをもとにして組立てられた。

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