ワンダーフォーゲル(読み)わんだーふぉーげる(英語表記)Wandervogel ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワンダーフォーゲル」の意味・わかりやすい解説

ワンダーフォーゲル
わんだーふぉーげる
Wandervogel ドイツ語

山野を、渡り鳥のように徒歩旅行する活動のこと(ワンダーフォーゲルドイツ語で渡り鳥の意)。1896年、ドイツ・ベルリン郊外の高校生カール・フィッシャーにより始められ、1901年、同じくドイツのウォルフ・マイネンWolf Meyenenという少年によってワンダーフォーゲルと名づけられた。初めは、社会の矛盾に抵抗して、自然の中に新しい文化と生活を求める青少年の旅行運動であった。都会生活を離れ、大自然の中で自主的な生活を行い、理想主義に燃えて語り合うというワンダリングは、1909年リヒアルト・シルマンによって始められたユースホステル活動とも結んで、たちまちヨーロッパから世界各国に広まり、ドイツじゅうにギターリュックサックを担いだワンダラーがみられるようになった。第二次世界大戦中はナチスヒトラー・ユーゲントに統合されたが、戦後復活し、本来の活動が行われるようになった。日本では戦後、大学生を中心にクラブが結成され、しだいに社会人にも普及していった。日本の場合、山地が多いので、その活動は登山と混同されやすいが、自然の中で生活し、語り合うことが主旨で、山もその対象の一部であり、海岸平野のワンダリングも多い。いわゆるスポーツ登山とは目的意識を異にしている。この点、イギリスで行われたハイキングと同義的に用いられている。しかし、厳格なトレーニングを要求するスポーツ登山と異なり、同好の士の集まりなので安易に流れやすいが、行動面でたいせつなことは、気象地図などの基礎知識や、歩き方などの技術を十分に習得し、無理のない計画をたて、用具の準備をして慎重な行動をすることが必要である。

[徳久球雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワンダーフォーゲル」の意味・わかりやすい解説

ワンダーフォーゲル
Wandervogel

ワンゲルと略す。山野を徒歩旅行し,自然のなかで自主的生活を営みつつ,心身を鍛練し,語り合うことを目的とする青年運動の一つ。ワンダーフォーゲルはドイツ語で「渡り鳥」の意。 19世紀末ドイツの高校生や大学生を中心に始められた運動で,ユースホステル活動と結び盛んに行われるようになった。第1次世界大戦後「祖国を愛する運動」として広がり,のちにはヒトラーユーゲントに合併されたが,第2次世界大戦後復活した。日本では,第2次大戦後大学生を中心にクラブが結成され,集団キャンプ旅行による訓練と相互の親睦を深める活動としてユースホステル運動とともに広く普及していった。

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