青少年運動(読み)せいしょうねんうんどう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

青少年運動
せいしょうねんうんどう

青少年の行う社会運動のことで、ときに中高年世代に指導あるいは操作される運動をさすこともあるが、基本的には青少年を主体とする自主的な運動をいう。青年と区別された場合の少年は、まだまだ自主的あるいは主体的たりえないことが多いので、とくに自主性と主体性を強調する場合には青年運動youth movementということも多い。[庄司興吉]

初期の運動

歴史的には、固有の意味での青少年期adolescenceが可能となるのは産業革命による社会の経済的水準向上のあとなので、青少年運動は19世紀のヨーロッパに始まる。市民革命に次ぐ産業革命の進展は、近代社会にさまざまな問題を生み出し、社会的カテゴリーとして成立したばかりの青少年層に強い衝撃を与えた。分裂していて国民的統一をなしえなかったイタリアではマッツィーニの青年イタリア党(1831)が現れ、産業革命後のイギリスでは1884年G・ウィリアムズによってキリスト教青年会(YMCA)が組織される。類似の運動は、ヨーロッパの他の国やアメリカでもそれぞれの形でみられたが、日本でも1880年(明治13)には東京で日本YMCAが設立され、90年には官製の枠のもとではあるが青年団が組織された。さらに、国民的統一を成し遂げ急速な資本主義的発展をみた19世紀末から20世紀初めのドイツでは、近代的な功利主義や便宜主義などに対する反動としてロマン主義的で自由主義的な青少年運動が起こり、ワンダーフォーゲル(渡り鳥)運動(1896)や自由ドイツ青年運動(1913)などが展開された。[庄司興吉]

戦間期の両極的運動

第一次世界大戦後、ロシア革命によって社会主義国が誕生したのに伴い、青少年運動は社会主義と結び付いて活発となる。ソ連で結成された少年組織ピオネール(1922)や青年組織コムソモール(1918)に倣おうとする運動が各国に広まり、日本でも1923年(大正12)に共産青年同盟が結成された。これらに対する反動としての青少年運動を展開したのはファシズムである。ファシスト・イタリアでは1926年に青少年組織バリラが法制化され、ナチス・ドイツでは26年に組織されたヒトラー・ユーゲントが36年に唯一の官製青年運動となり、天皇制下の日本でも41年(昭和16)までに青年団などの運動が大日本青少年団に一本化された。政治的・イデオロギー的対立の激化した戦間期は、こうして、自主的・主体的な青少年運動が上からの官製組織に吸収されていく期間でもあった。[庄司興吉]

二つの世界の対立

第二次大戦後、ファシズムの没落とともにファッショ的青少年運動も消滅するが、一方で共産圏を中心に世界民主主義青年同盟(1945)が組織されるのに対して、他方で西ヨーロッパとアメリカを中心に世界青年会議(1948)が結成され、青少年運動の領域にも「二つの世界」の対立が現れる。これらはそれぞれ各国で大なり小なりの影響力をもったが、戦後世界に大きな役割を果たした青少年運動としては、1950年代から60年代にかけて続々と独立や革命を達成したアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の民族解放運動と結び付いたものもあった。
 さらに注目すべきなのは、ベトナム戦争に反対する運動や紅衛兵の出現した中国の文化大革命などの影響を受けて、1960年代の後半に、高度に発達した資本主義諸国を中心に起こった青少年運動である。学生反乱や若者の反乱として起こったこれらの運動の背後には、先進社会に成立してきた高度な管理体制の、人間の内面にまで及ぶような抑圧があり、政治的な異議申立てばかりでなく、ヒッピーとかコミューン運動とかいう形態での文化的異議申立てが行われたことがその特色であった。こうした動きを踏まえて、たとえばアメリカの精神病理学者ケニストンKenneth Keniston(1930― )は、今日の先進産業社会では青少年期と成人以後との間に新しい固有の青年期youthが成立してきたとし、新しい青年の運動は、現代社会の政治的かつ文化的な革命につながる可能性をもっていると主張した。[庄司興吉]

人間の再生を目ざして

今日、青少年運動は、社会の高齢化や少子化の動きとともにますます重要となってくるであろう社会についての世代論的視角からして、女性解放運動や高齢者運動とともにいよいよたいせつである。みてきたように、それには、政治的なものや宗教的なものや文化的なものがあるだけでなく、地域社会形成にかかわるものから平和運動や開発援助や環境保護運動など地球的な人類共同体にかかわるものまであり、NGO(非政府組織)やNPO(非営利民間組織)およびボランティアといった今後の社会の動きを決めていくものと密接不可分であって、それらのすべてを通じて、社会の絶えざる世代的更新とそれを通じての人間の再生がいわば賭(か)けられている。青少年は教育の対象であるが、青少年運動は彼らの自主的かつ主体的な自己教育であり、青少年がいかなる人間につくられるかよりも、それ以上に、彼らが自らいかなる人間になろうとし、なるかによって、人類社会の今後は決められていくことになるであろう。[庄司興吉]
『『吉田昇著作集2 共同学習・社会教育』(1981・三省堂) ▽K・ケニストン著、庄司興吉・庄司洋子訳『ヤング・ラディカルズ』(1973・みすず書房) ▽栗原彬著『やさしさのゆくえ=現代青年論』(1981・筑摩書房) ▽庄司興吉著『人間再生の社会運動』(1989・東京大学出版会) ▽栗原彬著『「やさしさ」の闘い』(1996・新曜社)』

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