ロシアの劇作家チェーホフの四幕戯曲。「田園生活の情景」の副題をもつ。書かれた時期は未詳。1897年に地方で初演され、翌年モスクワ芸術座の上演で成功した。主人公ワーニャは死んだ妹の夫セレブリャコフ教授の生活を援助するため、47歳の今日まで結婚もせず自己を犠牲にして働き続けてきた。教授は退職後、若く美しい後妻エレーナを連れて領地にくるが、かつては一家の誇りであった教授が平凡でうぬぼれだけが強く、エゴイスティックな俗物、つまり「学問のある棒鱈(ぼうだら)」にすぎぬことがわかってワーニャの人生は崩壊する。教授が領地の処分を提案したとき、ワーニャは逆上して襲いかかる。一方、姪(めい)のソーニャは医者アーストロフをひそかに愛しているが、彼はエレーナに心を奪われており、ソーニャの愛を退ける。傷ついたソーニャは、絶望しきっている伯父を優しく慰め、また新しく生きてゆくことを2人で決意する。
[原 卓也]
『原卓也訳『ワーニャ伯父さん』(『世界文学全集59』所収・1975・集英社)』
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