をや(読み)ヲヤ

デジタル大辞泉 「をや」の意味・読み・例文・類語

を‐や

[連語]
格助詞「を」+係助詞「や」》疑問を表す。…を…(だろう)か。
「水の落ち足(=水ガ引キハジメルノ)―待つべき」〈平家・九〉
間投助詞「を」+間投助詞「や」》
(活用語の連体形に付いて)強い感動・詠嘆を表す。…(だ)なあ。…ことよ。
「もてひがみたること好み給ふ御心なれば、御耳とどまらむ―、と見たてまつる」〈若紫
名詞・助詞に付く。「いわんや…(において)をや」の形で)反語表現の文を強調する意を表す。まして…においてはなおさらである。…はいうまでもないことである。
「いかにいはんや、七道諸国―」〈方丈記
[補説]2漢文訓読からの用法

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「をや」の意味・読み・例文・類語

を‐や

  1. [ 1 ] ( 間投助詞の「を」と「や」とが重なったもの )
    1. 詠嘆を表わす。
      1. [初出の実例]「相思はぬ人乎也(ヲヤ)もとな白栲(たへ)の袖ひつまでにねのみし泣かも」(出典万葉集(8C後)四・六一四)
      2. 「けふはかくやつれはて給へる御ありさま、かねてはおもひよらざっしをや」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    2. 「いわんや…(…において)をや」の形で用いられ、「まして…においてはなおさらである」「まして…は言うまでもない」の意を表わす。→補注( 1 )
      1. [初出の実例]「況や〈略〉罪を滅す願ひを満て給ふ事伊坐しし時に不異(ことなら)ぬをや」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
      2. 「善人なをもちて往生をとぐ、いはんや悪人をや」(出典:歎異抄(13C後)三)
  2. [ 2 ] ( 格助詞の「を」に疑問の意の係助詞「や」の付いたもの ) 疑問を表わす。→補注( 2 )
    1. [初出の実例]「広瀬川袖つくばかり浅き乎也(ヲヤ)心深めて吾が思へるらむ」(出典:万葉集(8C後)七・一三八一)
    2. 「かの翁がつらにある癭(こぶ)をやとるべき。癭は福のものなれば、それをや惜み思ふらん」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)

をやの補助注記

( 1 )[ 一 ]の用法は漢文訓読的表現で、「いわんや」が反語の意を担い、「をや」は詠嘆を表わす。
( 2 )「万葉集」では、「を」が格助詞である場合も、それを受けた「や」が純粋の疑問を表わすことはなく、極めて詠嘆性の強い疑問である。したがってその「や」は、あるいは間投助詞とすべきものかもしれない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android