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アウストロアジア語族【アウストロアジアごぞく】
南アジア語族の意。W.シュミットが,インド中部からベトナムにわたる地域に散在する諸語を同系として命名した。(1)インドのムンダ諸語,(2)ニコバル諸島のニコバル語,(3)インドのカーシー語,ミャンマーとタイのモン語,カンボジアのクメール語,ミャンマーのパラワン語,ベトナムのベトナム語,チャム語,マレーシアのセノイ語などを含むモン・クメール語族に分けられる。これら諸語の親族関係は完全に証明されたものではなく,蓋然(がいぜん)性のうえに立てられた仮説であり,上記以外の分け方もある。シュミットはさらにこの語族とアウストロネシア語族を合わせてアウストリック(南方語族)と名づけたが定説とはなっていない。
→関連項目タイ諸語|パラウン|ミヤオ(苗)語
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アウストロアジアごぞく【アウストロアジア語族 Austro‐Asiatic】
東南アジア大陸部とインドとに分布する諸言語を含む語族。〈南アジア語族〉の意で,日本では南亜語族という名称も使われていた。現在までに知られている言語の数は約150,使用者の総数は約4000万人と推定されているが確かではない。G.Difflothによる分類によれば,そのおもなものは以下の通りである。(1)ムンダ諸語Munda(インド)(a)北ムンダ語派 サンターリー語Santali,ムンダーリー語Mundariなど(b)南ムンダ語派 カーリア語Kharia,ソーラ語Soraなど(c)西ムンダ語派 ナハーリー語Nahali(2)ニコバル諸島諸語Nicobarese(3)モン・クメール語族Mon‐Khmer(a)カーシー語派Khasi(アッサム地方) 標準カーシー語Standard Khasiなど(b)パラウン語派Palaungic(ビルマ) パラウン語Palaung,ワ語Wa,ダノ語Danaw,ラワ語Lawaなど(c)モン語派Monic(ビルマ,タイ) モン語Monなど(d)クム語派Khmuic(タイ,ラオス) クム語Khmu,ラメート語Lametなど(e)ベト・ムオン語派Viet‐Muong(ベトナム) ベトナム語Vietnamese(南・北等の方言がある),ムオン諸語Muong(正しくはMu’o’ng)など(f)カトゥ語派Katuic(ベトナム) カトゥ語Katu,ブル語Bru,クイ語Kuy,パコ語Pacohなど(g)バナル語派Bahnaric(ベトナム,カンボジア) スティエン語Stieng,チュラウ語Chrau,スレ語Sre,ムノン語Mnong,ロベン語Loven,ブラオ語Brao,バナル語Bahnar,セダン語Sedangなど(h)ペアル語派Pearic(カンボジア) ペアル語Pear,チョン語Chong,サムレ語Samreなど(i)クメール語Khmer(カンボジア,ベトナム,タイ。
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デジタル大辞泉「アウストロアジア語族」の解説
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世界大百科事典内のアウストロアジア語族の言及
【インド】より
…すなわち,(1)アフリカから来て,アンダマン諸島,マレー半島方面に進んだネグリト系種族は,大集団としてインド亜大陸に定住することはなかったが,次に来た人種の言語に影響を与えている。(2)次いで,地中海地方の種族の一支派でパレスティナ地方からやって来たとされる種族の言語にネグリト族の言語の影響が及び,アウストロアジア系の言語(アウストロアジア語族)となった。古くは広い地域に分布したらしいが,今日では中部と東部のインド,バングラデシュなどの山岳・丘陵地帯で,数万人から1万人ぐらいの少数部族民により話される言語となっている(サンタール語,カーシ語など)。…
【東南アジア】より
…しかし例えば,今日の採集狩猟民は,旧石器時代の生活様式をそのまま保存してきたのではなく,農耕民が存在することを前提として特殊な発展を遂げた採集狩猟民であるように,共存によって民族間関係の体系が生まれ,また変化していくのである。
[語族,民族の形成と移動]
東南アジア大陸部におけるおもな語族としては,アウストロアジア(南アジア)語族のモン・クメール語派,シナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派,カム・タイ語派(タイ諸語),アウストロネシア(南島)語族のインドネシア(ヘスペロネシア)語派がある。 モン・クメール語派はインドのムンダ諸語とともにアウストロアジア語族を形成しており,この語派の言語を話す人々は採集狩猟民(ピー・トン・ルアン,セマン),穀物焼畑耕作民(ラメート族,ワ族など),平地水稲犂耕民(モン族,クメール族,ベトナム人)というように,さまざまな生活様式にわたっている。…
※「アウストロアジア語族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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