アカミミガメ(読み)あかみみがめ(英語表記)red-eared slider

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカミミガメ」の意味・わかりやすい解説

アカミミガメ
あかみみがめ
red-eared slider
[学] Chrysemys scripta

爬虫(はちゅう)綱カメヌマガメ科のカメ。同科ニシキガメ属に含まれ、子ガメはミドリガメの名でペットにされた。南北アメリカに広く分布し、和名キバラガメクジャクガメとよばれる仲間も含め、生息地域によって、12亜種に分類される。そのなかでも、もっともよく知られているミシシッピアカミミガメC. scripta elegansは、ペットが脱出したりして現在日本の各地で野生化し、問題となっている。本亜種は甲長約30センチメートル、背甲は、幼体では黄色または黄緑色で、赤や黄色の複雑な斑紋(はんもん)があるが、成熟個体では黒みがかって斑紋も不明瞭(ふめいりょう)となる。頭頸(とうけい)部にも黄緑色の美しい筋(すじ)模様があって、目の後方の赤色模様がアカミミガメの名の由来である。湖、河川、池沼などの穏やかな淡水にすみ、水底が軟らかく水生植物の豊富な環境を好む。成熟した雄の前肢の各指では性徴としてつめが長くなる。繁殖期には雄は雌の前を後ずさりしながら泳ぎ、前肢を伸ばし長いつめを雌の顔近くで小刻みに震わせて求愛行動を行う。雌は一度に平均8個ほどの卵を、水辺地中に穴を掘って産む。

[松井孝爾]

 アカミミガメは生態系被害防止外来種にあげられているが、すでに大量に飼育されており(約110万世帯で約160万匹)、防除対象となる特定外来生物に指定するとかえって不法投棄を招き、生態系への被害が拡大するおそれがある。そのため、2022年(令和4)の改正外来生物法では、アカミミガメの輸入、販売、放出を規制するのみになっている。

[編集部 2022年11月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「アカミミガメ」の意味・わかりやすい解説

アカミミガメ
Trachemys(=Chrysemysscripta

ヌマガメ科のカメ。ミシシッピアカミミガメ,キバラガメ,クジャクガメなど12亜種が含まれるが,単にアカミミガメと呼ばれるものはいない。アメリカ合衆国南東部から南アメリカ北部まで広く分布し,甲長20~30cm,背甲の中央部にのみ1本の隆条がある。背甲,腹甲および頭頸部に美しい斑紋があるが,個体変異が多く,成長とともに背甲が黒みがかって斑紋が薄れてくる。成熟した雄の前肢のつめは雌よりも長く,繁殖期には雌の顔近くでこれをふるわせて求愛行動を行う。緩やかな流れ,池沼,湖に生息し,餌はおもに植物質であるが幼体では肉食性が強い。4~7月ごろ,一度に8~20個ほどの卵を水辺の地中に産み,60~80日ほどで孵化(ふか)する。一般にアカミミガメの子ガメはミドリガメと呼ばれるが,sliderと呼ぶニシキガメ属Chrysemysの子ガメを広く指す場合もある。アメリカ合衆国南部原産のミシシッピアカミミガメT.s.elegansは,ペットとして飼育中に逃げたりして,現在日本の各地で野生化している。
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