アブドゥフ(その他表記)`Abduh, Muḥammad

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブドゥフ」の意味・わかりやすい解説

アブドゥフ
`Abduh, Muḥammad

[生]1849. ナイルデルタ地域
[没]1905.7.11. アレクサンドリア近郊
エジプトの法学者,近代思想家。アズハル大学(→アズハル・モスク)に学び,初めはスーフィズム傾倒ジャマール・ウッディーン・アルアフガーニーに師事してのち,イスラムを本来の精神に戻し,近代科学を取り入れ,暴力ではなく教育の振興によってイスラム諸国を西ヨーロッパの支配から脱却させなければならないとの信念をいだいた。しかしアラビー・パシャの革命運動に巻き込まれ,1882年に国外に追放された。初めベイルートに赴いたが,アフガーニーに招かれてパリに行き,協力して週刊新聞『固い連結』al-`Urwah al-Uthqāを刊行。同紙は 1883~84年に 18号まで続いただけだったが,アブドゥフやアフガーニーの論説は広くイスラム世界,特にアラブ世界の識者の注目をひき,深い感銘を与え,新思想に目を開かせた。廃刊後はベイルートに戻り,イスラム神学などを教授。1888年許されてエジプトに帰り,多くの要職を与えられた。裁判官を経て 1899年大ムフティー(→ムフティー)に任じられ,宗教上の問題について最高の判決ファトワー)をくだす権限を与えられた。またアズハル大学の運営の最高委員会の一員となり,その改革を力説した。著述にも力を注ぎ,コーランの注釈書を書いた。これは未完で終わったが,高弟ラシード・リダーが遺志を継ぎ『マナール注解書』Tafsīr al-Manārとなった。『唯一神論』Risālah al-Tauḥīdその他の著書を残した。イスラム改革のため精力的に活動し,後進に大きな影響を与えた。

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