アマード(読み)あまーど(その他表記)Jorge Amado

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマード」の意味・わかりやすい解説

アマード
あまーど
Jorge Amado
(1912―2001)

ブラジルの代表的作家。処女作『カーニバルの国』(1931)以来、平易で詩的な文体、巧みな語り口で30編近くの小説を発表し、邦訳も含めて40か国語以上に翻訳されている。映画化、テレビドラマ化された作品も多く、ノーベル文学賞の候補にも数度あがっている。作品は一貫して故郷のブラジル北東部地方を舞台とした地方色の強いもので、前半期の作品では半封建的な社会、社会的不正に苦しむ人々をプロレタリア小説的に取り上げている。ブラジル文学史上空前のベストセラー『ガブリエラ、丁字(ちょうじ)と肉桂(にっけい)』(1958)以降は、性欲食欲と結びついた民衆的なユーモア基調として、社会習慣・風俗の変化、黒人系の人々の文化、宗教などを描いている。代表作は『砂の戦士たち』(1937)、『果てなき大地』(1943)、『老練なる船乗りたち』(1961)など。

[高橋都彦]

『武田千香訳『果てなき大地』(1996・新潮社)』『阿部孝次訳『砂の戦士たち』(1995・彩流社)』『高橋都彦訳『老練なる船乗りたち』(旺文社文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマード」の意味・わかりやすい解説

アマード
Amado, Jorge

[生]1912.8.10. バイア,ピランジ
[没]2001.8.6. サルバドル
ブラジルの小説家。社会小説にすぐれ,特に北東部のカカオ栽培地帯の社会問題を扱った作品が著名。抒情的な味わい,文体の美しさで,ブラジル現代文学の第一人者とみなされ,多くの作品が海外,特に社会主義国で翻訳された。主著『カーニバルの国』O País do Carnaval (1932) ,『カカオ』 Cacau (33) ,『汗』 Suor (34) ,『死の海』 Mar Morto (36) ,『限りなき大地』 Terras do Sem-Fim (42) ,『サン・ジョルジェ・ドス・イリェウス』 São Jorge dos Ilhéus (44) ,『赤い穀物畑』 Seara Vermelha (46) ,代表作『ガブリエラ,丁字と肉桂』 Gabriela,Cravo e Canela (58) ,『年老いた船乗り』 Os Velhos Marinheiros (62) 。

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百科事典マイペディア 「アマード」の意味・わかりやすい解説

アマード

ブラジルの作家。19歳でデビューし,平易で詩的な文体と生き生きとした描写力を発揮し,多くのベストセラーを生み出し,40ヵ国語以上に翻訳されている。一時,左翼運動に投じ,11度の逮捕と2度の亡命生活を経験した。一貫して地方,特に故郷バイーアの人々を描き,ユーモアにあふれた,たぐい稀なストーリー・テラーである。《果てなき大地》《ガブリエラ,丁字と肉桂》《キンカス・ベーロ・ダグアの二度の死》などが代表作。スターリン国際平和賞受賞。

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