カカオ(読み)かかお(その他表記)cacao

翻訳|cacao

精選版 日本国語大辞典 「カカオ」の意味・読み・例文・類語

カカオ

  1. 〘 名詞 〙 ( [スペイン語] cacao ) アオギリ科の高木。中央アメリカ及び南アメリカの原産といわれ、現在ではガーナブラジルスリランカなど広く熱帯地方で栽培されている。幹は高さ七~一〇メートルに達する。葉は先のとがった長卵形の革質で互生する。花は枝や幹の上に直接開花し、短い柄があり、径約一・五センチメートルの五弁花で淡紅色を帯びる。花後、長さ五~一五センチメートルの紡錘形の果実を結び、熟して橙黄または赤紫色になる。果実は五〇~一〇〇の種子をもち、これを加工し粉末にしてココアをつくる。カフェインを含み、飲料にするほか、主としてチョコレートの原料となる。ココア。ココアの木。
    1. [初出の実例]「又此に亜墨利加より葛々阿〈樹子の名〉を買、叔箇(ショコランド)〈飲料に点入する薬〉を製す」(出典:輿地誌略(1826)二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カカオ」の意味・わかりやすい解説

カカオ
かかお
cacao
[学] Theobroma cacao L.

アオギリ科(APG分類:アオイ科)の常緑高木。中南米原産。樹高4~10メートル、多くの枝を水平に近く張る。葉は長さ20~30センチメートル、幅7~10センチメートルの長楕円(ちょうだえん)形で、短い葉柄があり互生する。花は、幹および太い枝に直接房状に多数つき、小輪で黄色地に赤褐色の線条があり、一年中次々と開き、結実する。果実は長さ約30センチメートルの紡錘形の蒴果(さくか)で、表面に縦溝とこぶがあり、初め緑白色で、のちに赤、黄、橙(だいだい)、紫などに熟す。内部は5室に分かれ、白い粘状物で覆われた種子が20~30個ある。

 種子を水につけて発酵させてから干すと赤みを帯び、特有の芳香が出る。これをカカオ豆という。カカオ豆を培煎(ばいせん)し、砕いて殻を除き、すりつぶしてカカオペーストにする。これを圧搾するとカカオバターがとれ、搾りかすがココアである。カカオペーストにカカオバター、砂糖、デンプン、香料などを加えて練り上げるとスイートチョコレートができる。カカオバターはまた化粧品、香料、医薬品の原料にも用いる。カカオにはテオブロミンというアルカロイドが1%程度含まれるが、その刺激興奮作用はカフェインよりは穏やかで、ココアは子供や病人が飲用してもほとんど害がない。

 栽培は、気温28℃以上、年降水量2500ミリメートル程度の高温多湿な気候で、肥沃(ひよく)な傾斜地を好み、赤道を挟んで南・北緯20度内の特定の地域に限定される。繁殖は種子により、普通は4年目から収穫でき、成樹1樹当り年間70~80果が得られる。主産地はコートジボワール、ガーナ、インドネシアである。

[星川清親 2020年4月17日]

文化史

野生種はアマゾンやオリノコ川の流域に分布するが、コロンブスの到着以前に中央アメリカでも栽培下にあり、メキシコではユカタン半島で生産された種子が、メキシコ高原のアステカ人の地域に送られ、飲用され、貨幣の代用に使われた。ヨーロッパには1494年、コロンブスが伝えた。1680年までにフィリピンにもたらされ、熱帯アジアにも広がった。アメリカでカカオ豆が生産されるのは、19世紀以降である。

[湯浅浩史 2020年4月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「カカオ」の意味・わかりやすい解説

カカオ
cacao
Theobroma cacao L.

アオギリ科の常緑樹。樹高4~10m。葉は長楕円形,全縁で先がとがり,長さ20~30cm。花は幹に直接多数つき,径1.5cm,萼は桃色,花弁は黄色,5弁からなり基部は帽子状に広がっている。おしべは10本で,うち5本は退化している。年間を通じて開花するが,結実するものは200~300花に1個である。果実は紡錘形で,長さ15~20cm,径7cm,表面に縦溝があり,はじめ緑白色から濃黄色となり,熟すと赤みをおびる。内部は5室に分かれ,白い粘状物に包まれた長さ2.5cm,幅1.5cmほどの卵形の種子が20~50個つまっている。種子を特殊な木桶で発酵させると,独特の香気と紅色をおびる。これを乾燥したものをカカオ豆といい,焙煎(ばいせん)して種皮を去り,粉末にして砂糖・ミルク・香料などを加え,押し固めてチョコレートを作る。粉末を圧搾して脂肪を去ったものがココアcocoaである。得られた油がカカオバターで,人間の体温ほどで液化し,マーガリン,ポマード,医薬に用いる。カカオはテオブロミンというアルカロイドを約1%含む。中・南アメリカ熱帯の原産で,紀元前から原住民が栽培,飲用した。18世紀からヨーロッパに普及し,日本へは大正時代(1912-26)中期に渡来した。世界のカカオ豆生産地はアフリカ,南アメリカでほとんどを占めるが,なかでもコートジボアール,ガーナが多い。繁殖はふつう種子による。本畑では庇蔭(ひいん)樹を植えて強光から保護する。2年目から開花し,4年目から収穫が始まって樹齢50年くらいまで利用される。
執筆者: カカオの原産地は南アメリカのオリノコ川源流あたりと考えられているが,古くからマヤ文化圏,アステカ文化圏では,この種子をトウモロコシの種子といっしょに打ち砕いて水とともに煮,トウガラシを加えて飲んでいた。マヤ諸語ではこの植物をカカウアトルcacahuatleと称し,カカオはこの語から派生したものである。またアステカ語で前述の飲物をチョコラトルchocolatlと呼び,チョコレートchocolateはこの語に由来する。カカオの実は,貨幣の役割ももち,アステカ族は生産地の部族に貢納させていた。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「カカオ」の意味・わかりやすい解説

カカオ

中南米原産のアオギリ科の高木。種子をココアチョコレートの原料とする。古くからメキシコでは飲料,薬用とされ,16世紀にヨーロッパへ伝わった。現在,中南米,アフリカ,東南アジアで広く栽培される。白い小花が多数幹や枝につくが,ごく少数が結実。果実は長さ約10cmの長楕円形で,中に40〜60個の種子を生ずる。種子はテオブロミンと多量の脂肪を含有。
→関連項目嗜好作物セルバテオブロミンバレンシア(ベネズエラ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カカオ」の意味・わかりやすい解説

カカオ
Theobroma cacao; cacao

アオギリ科の常緑小高木で,高さ約 10m。熱帯アメリカ原産であるが,現在は熱帯各地に栽培されている。花は幹や大枝に直接つく。直径約 1.5cm,萼は淡紅色で5裂し,花弁はクリーム色で5枚ある。1株に無数の花をつけるが結実は少い。果実は長さ約 10cmの長楕円体状,表面に深い溝がある。中に径 2.5cmほどの種子を多数含む。種子を発酵させたものがカカオ豆で,これを 130~140℃で炒って砕くとカカオペーストがとれる。これはチョコレートの原料となり,またペーストからとれる脂肪がカカオバターで,体温で溶けるため化粧料や坐薬の基剤に使われる。バターを除いたものは暗褐色で,粉末にして「ココア」をつくる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カカオ」の解説

カカオ
cacao

ココア,チョコレートなどの原料。南アメリカが原産といわれる。16世紀以来ココアの飲用はスペインを中心にヨーロッパに広まり,カカオはトリニダード・トバゴ,ブラジル,西アフリカ,セイロンなどで栽培されるようになった。

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栄養・生化学辞典 「カカオ」の解説

カカオ

 [Theobroma cacao].赤道に近い熱帯地方に生育するアオイ目アオギリ科カカオノキ属に属する植物で,果実からカカオ豆をとり,チョコレートやココアの原料とする.

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世界大百科事典(旧版)内のカカオの言及

【チョコレート】より

カカオを原料にした飲料および菓子。
[歴史]
 中央アメリカや南アメリカでは古代からカカオは神からの授かりものとされ,その種子をすりつぶし水やトウモロコシの粉を加えた飲料は独特の刺激と効果で珍重されていた。…

※「カカオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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