日本大百科全書(ニッポニカ) 「カカオ」の意味・わかりやすい解説
カカオ
かかお
cacao
[学] Theobroma cacao L.
アオギリ科(APG分類:アオイ科)の常緑高木。中南米原産。樹高4~10メートル、多くの枝を水平に近く張る。葉は長さ20~30センチメートル、幅7~10センチメートルの長楕円(ちょうだえん)形で、短い葉柄があり互生する。花は、幹および太い枝に直接房状に多数つき、小輪で黄色地に赤褐色の線条があり、一年中次々と開き、結実する。果実は長さ約30センチメートルの紡錘形の蒴果(さくか)で、表面に縦溝とこぶがあり、初め緑白色で、のちに赤、黄、橙(だいだい)、紫などに熟す。内部は5室に分かれ、白い粘状物で覆われた種子が20~30個ある。
種子を水につけて発酵させてから干すと赤みを帯び、特有の芳香が出る。これをカカオ豆という。カカオ豆を培煎(ばいせん)し、砕いて殻を除き、すりつぶしてカカオペーストにする。これを圧搾するとカカオバターがとれ、搾りかすがココアである。カカオペーストにカカオバター、砂糖、デンプン、香料などを加えて練り上げるとスイートチョコレートができる。カカオバターはまた化粧品、香料、医薬品の原料にも用いる。カカオにはテオブロミンというアルカロイドが1%程度含まれるが、その刺激興奮作用はカフェインよりは穏やかで、ココアは子供や病人が飲用してもほとんど害がない。
栽培は、気温28℃以上、年降水量2500ミリメートル程度の高温多湿な気候で、肥沃(ひよく)な傾斜地を好み、赤道を挟んで南・北緯20度内の特定の地域に限定される。繁殖は種子により、普通は4年目から収穫でき、成樹1樹当り年間70~80果が得られる。主産地はコートジボワール、ガーナ、インドネシアである。
[星川清親 2020年4月17日]
文化史
野生種はアマゾンやオリノコ川の流域に分布するが、コロンブスの到着以前に中央アメリカでも栽培下にあり、メキシコではユカタン半島で生産された種子が、メキシコ高原のアステカ人の地域に送られ、飲用され、貨幣の代用に使われた。ヨーロッパには1494年、コロンブスが伝えた。1680年までにフィリピンにもたらされ、熱帯アジアにも広がった。アメリカでカカオ豆が生産されるのは、19世紀以降である。
[湯浅浩史 2020年4月17日]