アルプス山地の羊飼いが用いるリップリード式の気鳴楽器。モミ、シナ、ポプラなどの長材を縦に半分に割り、中をくりぬいたのち、ふたたびあわせ、その上を樹皮やガットなどで巻いてつくる。管長は120センチメートルぐらいのものが多いが、4~5メートルに及ぶものもある。マウスピース(歌口)は近年別作りのものが多い。第2から第8ないしそれ以上の倍音を組み合わせて音型をつくり吹き鳴らす。ベートーベン作曲『田園交響曲』第5楽章の冒頭に、アルペンホルンを模した音型が使われている。その歴史は古く、14世紀にはすでに羊飼いの合図用として使われており、その後教会の招集時や戦争時にも使われた。同種のものは、スカンジナビアからロシア、スラブ諸国、高地ドイツに至るまでみられる。
[川口明子]
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