出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
アレルギー反応の誘因となっているアレルゲンをあえて投与することにより、アレルゲンによって引き起こされる症状が起こりにくい状態にしていく治療法。従来の薬物療法とは異なり、投与した時点での即効性を期待するものではなく、アレルギーの自然経過を変化させることにより、長期的にアレルギーが起こりにくくなることを期待するものである。そのため、症状が落ち着いている時期に、長期間にわたって行う必要があるが、アレルギーの根本原因を解決することを目ざした方法であるといえる。従来は減感作(げんかんさ)療法ともよばれてきたが、現在ではアレルゲン免疫療法とよぶのが一般的である。
治療の対象となるのは、アレルゲンに対してIgE(免疫グロブリンE)抗体があることが確認される人であり、またそのアレルゲンによって実際に症状が生じていることが確認されている人である。したがって、症状の誘因となっている環境中のアレルゲンの回避もできるかぎり行う必要がある。
2022年(令和4)現在、日本においてアレルゲン免疫療法の対象となっているアレルゲンの代表は、ダニとスギ花粉である。また、食物アレルギーの原因となっている食物を、症状が出ない条件で摂取することも同じ効果を期待しているといえる。そのほかには、ハチ毒アレルギーや薬剤過敏症に対して、原因物質を投与することにより改善を期待する方法もこれにあたる。
ダニとスギ花粉に対するアレルゲン免疫療法には、皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)と舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)がある。皮下免疫療法は注射によって行う。そのため、定期的に医療機関を訪れる必要がある。舌下免疫療法は、錠剤を舌の下に入れることによって行う。初回のみ医療機関で行うが、その後は自宅で行うことができる。
両者を比較すると、効果は前者のほうがより高いといわれているが、副作用については、前者は全身型の反応であるアナフィラキシーが起こる可能性があるのに対し、後者は口腔内の違和感は頻発するが全身型の反応はまれであることから、後者がより安全といえる。治療の継続については、前者は定期通院している限りは継続できるのに対し、後者は毎日自分自身で自発的に行わなければならないため、継続しにくい傾向があり、その意義と使用方法について十分に理解して行う必要がある。
[高増哲也 2022年7月21日]
アレルゲン免疫療法(以前の減感作療法)は、アレルギー性疾患の原因アレルゲンを次第に増やしながら注射してゆき、アレルゲンに対する免疫を得ようとする治療法です。
喘息では通年性の環境抗原であるダニに対して、鼻炎ではダニとスギ花粉とが主な対象になります。ダニの場合、ダニを主成分とする
なお、最近、重症のアレルギー性喘息に対する原因治療として抗IgE抗体(ゾレア)が開発され、治療に用いられるようになりました。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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