翻訳|Arkansas
アメリカ合衆国南部の州。略称Ark.。連邦加入1836年,25番目。面積13万4856km2,人口291万5918(2010)。州都および最大都市はリトル・ロック。州名はスー・インディアン系統のクワポー族の名称(〈下流の人々〉の意)に由来する。1803年ルイジアナ購入によりフランス領からアメリカ領となる。ミシシッピ川西岸にあり,支流のアーカンソー川がほぼ中央を西から東へと横断している。湿潤温暖気候で西南日本に似ている。北西部はオザーク台地とウォシタ山地とからなり森林が広がる。山地部は伝統的に貧困地帯であったが,交通条件の向上により孤立は改善され,さらにホット・スプリングズ国立公園を中心に,観光開発も進められてきた。かつては湿地の広がっていた東部と南部の低平な平野は肥沃な農業地帯をなす。南部は長い間綿花栽培と零細小作農が特徴的であったが,近年大豆と米に比重が移ってきた。全米一のボーキサイト産出州であるほか,石油や天然ガスも産する。州南西部のマーフリーズボロには,合衆国唯一のダイヤモンド鉱山があったが,今日は観光名所となっている。森林資源にも恵まれ,カシ,ヒッコリー,松類の伐採が盛ん。工業化も,消費財生産を中心に徐々に進められてきた。伝統的に経済水準は低く,1人当りの平均所得は50州中49位(1980)である。旧奴隷州の一つで黒人が多く,1860年には11万で州人口の25%を占め,今日37万(1980,16%)を数える。1957年には白人と黒人の共学をめぐって,リトル・ロックで暴動が起きている。人々は保守的で,宗教的には〈バイブル・ベルト〉にあってファンダメンタリズムが圧倒的に多い。1940年以降減少に転じた州人口は近年増加傾向にあり,80年にはピーク時を上回るまでに回復した。
執筆者:正井 泰夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカ合衆国、中南部の州。面積13万7539平方キロメートル、人口267万3400(2000年国勢調査速報値)。北はミズーリ州と、東はミシシッピ川を挟んでテネシー州およびミシシッピ州と、南はルイジアナ州と、西はテキサス州およびオクラホマ州と、それぞれ接する。州都はリトル・ロック。その他の主要都市としては、フォート・スミス、ノース・リトル・ロック、パイン・ブラフ、ホット・スプリングズ、ウェスト・メンフィスなどがある。州の北部と西部は、オザーク台地、ボストン山脈、ウォシト山脈からなり、南部は低地、東部は扇状地である。アーカンザス川がオザーク台地とウォシト山脈の間を南東に流れ、ミシシッピ川に合流する。気候は暑い夏と温暖な冬が特色で、リトル・ロックでは7月の平均気温は27℃、1月の平均気温は4.8℃、年降水量は1232ミリメートルである。
19世紀には主要な綿花生産地であったが、20世紀になって農業も多様化し、農業生産額では大豆、綿花、米、家禽(かきん)、肉牛、酪農製品の順である。鉱業は、石油、ボーキサイト、天然ガスの採掘が行われる。州の約60%が森林に覆われており、製材所、製紙工場が多い。食品加工、電気機械部品、家具などがおもな工業生産物である。最近、化学工業も発展している。
アーカンソーに初めて到達した白人は1541年、スペイン人のデ・ソトde Sotoであったが、その後、フランス人の探検と定住地の建設により、フランス領土となった。1803年、合衆国のルイジアナ購入によって合衆国領土となり、1836年に合衆国25番目の州となった。1861年の南北戦争勃発(ぼっぱつ)後、連邦から脱退し、南部連合に加入した。南北戦争後の復興期には、教育の普及と鉄道の建設が進み、奴隷制度に基づいた古いプランテーション制度は、分益小作制度に変化した。オザーク台地には独特な習慣、技術、迷信をもった山地民俗が残っている。
[菅野峰明]
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