ファンダメンタリズム(読み)ふぁんだめんたりずむ(英語表記)Fundamentalism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ファンダメンタリズム」の意味・わかりやすい解説

ファンダメンタリズム
fundamentalism

根本主義と訳される。 19世紀末から 20世紀初頭にかけてヨーロッパの自由主義神学の影響がアメリカのプロテスタント教会に及び,この神学に抵抗して信仰の根本的教理を固守しようとして,特にアメリカに起ったキリスト教信仰運動ダーウィンの進化論,聖書の歴史的高等批評近代主義,教会の世俗化などに反対した。聖書を逐語霊感説によって解釈し,信仰の伝統的立場を固持して教会教派の分裂を招いた。 1895年ナイアガラで開かれた保守的プロテスタント聖書会議は「ファンダメンタリズム5項目」として次のものをあげている。聖書の逐語無謬,イエス・キリストの神性,処女降誕,代理贖罪説,キリストの身体的復活と身体的再臨。現代アメリカでは家庭崩壊や性の乱れに対して,伝統的家族観や共同体意識の復権が「モラル・マジョリティ」などの根本主義の団体から叫ばれている。また聖書を根本原理とすることから人工妊娠中絶や教科書内容 (進化論) を具体的な批判対象として問題化している。政治的にはニュー・ライトの傾向に近いものがある。なお,一般に原理主義といわれ,現存する社会秩序混乱道徳心頽廃に対抗して伝統的価値観への回帰を主張する思想および運動をさすこともある。イスラム原理主義はその代表的なものである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファンダメンタリズム」の意味・わかりやすい解説

ファンダメンタリズム
ふぁんだめんたりずむ
Fundamentalism

根本主義。1920年代、アメリカ・プロテスタント諸教派内に起こった論争的保守的運動。進化論や聖書の高等批評を容認したり社会的福音(ふくいん)に同調する神学的近代主義に抵抗し、逐語霊感説による聖書無謬(むびゅう)、キリストの処女降誕、刑罰代償説、キリストの復活、キリストの再臨などをキリスト教信仰の根本教義と主張し、その「ファンダメンタルズ・真理の証言」(1910~15)はアメリカ国内に驚異的支持を得た。熾烈(しれつ)な論争が起こり、とくにバプティスト派や長老派において異端摘発や追放、分裂を引き起こした。南部諸州で栄え、テネシー州では公立学校から進化論を閉め出した(1925)。しかし30年代には影響力が衰え、排他的・攻撃的性格を弱め、50年代以降福音派がそれを継承し、その指導的人物はビリー・グラハムである。

[小笠原政敏]

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