中腎(ちゅうじん)からの排出管で、中腎輸管ともいう。脊椎(せきつい)動物の腎臓の発生においては、まず前腎が形成され、それに伴って前腎輸管が生じて総排出腔(こう)につながるが、前腎が退化して中腎が形成されると、前腎輸管は中腎とつながってウォルフ管となる。魚類や両生類では成体でも中腎が腎臓として働く。このためウォルフ管も中腎からの尿路(輸尿管)として機能し、また雄では精巣とも連絡して輸精管にもなる。爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類の雄では中腎は副精巣となり、ウォルフ管は輸精管としてのみ働く。雌では中腎の退化とともにウォルフ管も退化する。ただし、鳥類や哺乳類の成体ではウォルフ管が痕跡(こんせき)的に観察されることがある。雌で輸卵管となるミュラー管(魚類のあるものには認められない)はウォルフ管と密接な関係があり、前方から後方に向かってウォルフ管と平行して形成され、やはり総排出腔に達するが、雄ではやがて退化する。ウォルフ管という呼称は、鳥類胚(はい)においてこれを発見し初めて記載した(1759)ドイツの解剖学者C・F・ウォルフにちなむ。
[八杉貞雄]
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…中腎が働きだすと不用になる前腎輸管はミュラー管Müllerian ductとも呼ばれ,雄では退化するが雌では存続して輸卵管となる。中腎輸管はウォルフ管Wolffian ductと呼ばれ,中腎が退化する爬虫類以上の動物の雄では輸精管となり,雌では退化する。 外形も動物により異なり,一般には左右1対であるが,軟骨魚類や硬骨魚類のように左右が融合したり,鳥類のように前・中・後葉と3葉に分葉したり,哺乳類の腎臓でも普通にみられるソラマメ型から多くの小腎からなる葉状腎をもつものまで多様である(図3)。…
…すなわち,胎生期の初期に前腎が体の左右に各1個でき,前腎からは,それぞれ1本の前腎輸管が出ている。やがて前腎が退化すると,その後方に中腎(原腎ともいう)ができ,前腎輸管はそのまま中腎輸管となるが,これをウォルフ管Wolffian ductという。そのころ,この管の外側を並行して走るミュラー管Müllerian ductが左右各1本できるが,これら二つの管はその後男女によって異なる運命をたどることになる。…
※「ウォルフ管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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