ウォルフ管(読み)ウォルフカン(その他表記)Wolffian duct

デジタル大辞泉 「ウォルフ管」の意味・読み・例文・類語

ウォルフ‐かん〔‐クワン〕【ウォルフ管】

中腎輸管ちゅうじんゆかん別名C=F=ウォルフが発見したのにちなむ。

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精選版 日本国語大辞典 「ウォルフ管」の意味・読み・例文・類語

ウォルフ‐かん‥クヮン【ウォルフ管】

  1. 〘 名詞 〙 ( ウォルフ[ 一 ]が発見したことによる名 ) 中腎の排出管。雄では輸精管となるが、爬虫(はちゅう)類以上の高等動物の雌では消失する。中腎輸管

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォルフ管」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ管
うぉるふかん
Wolffian duct

中腎(ちゅうじん)からの排出管で、中腎輸管ともいう。脊椎(せきつい)動物の腎臓の発生においては、まず前腎が形成され、それに伴って前腎輸管が生じて総排出腔(こう)につながるが、前腎が退化して中腎が形成されると、前腎輸管は中腎とつながってウォルフ管となる。魚類両生類では成体でも中腎が腎臓として働く。このためウォルフ管も中腎からの尿路(輸尿管)として機能し、また雄では精巣とも連絡して輸精管にもなる。爬虫(はちゅう)類、鳥類哺乳(ほにゅう)類の雄では中腎は副精巣となり、ウォルフ管は輸精管としてのみ働く。雌では中腎の退化とともにウォルフ管も退化する。ただし、鳥類や哺乳類の成体ではウォルフ管が痕跡(こんせき)的に観察されることがある。雌で輸卵管となるミュラー管(魚類のあるものには認められない)はウォルフ管と密接な関係があり、前方から後方に向かってウォルフ管と平行して形成され、やはり総排出腔に達するが、雄ではやがて退化する。ウォルフ管という呼称は、鳥類胚(はい)においてこれを発見し初めて記載した(1759)ドイツの解剖学者C・F・ウォルフにちなむ。

[八杉貞雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウォルフ管」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ管
ウォルフかん
Wolffian duct

ドイツの解剖学者 C. F.ウォルフ (1733~94) の名を付した脊椎動物の排出管。胎生初期に前腎が生じ,左右1本の縦走管 (前腎輸管) によって排泄腔通じ,前腎は退化し,中腎 (原腎) ができ,前腎輸管が中腎輸管 (中腎管) となる。中腎輸管は前腎輸管がそのまま転化してウォルフ管と呼ばれる場合と,前腎輸管が2本に割れて,一方が中腎と連結したウォルフ管となり,他方はミュラー管となる場合とがある。次いでウォルフ管は雄では輸精管となるが,無羊膜類 (両生類,魚類) では輸尿管も兼ねる。雌では退化して別の輸尿管が生じるか (羊膜類) ,ウォルフ管が輸尿管としてのみ役割を果し続ける (無羊膜類) 。

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百科事典マイペディア 「ウォルフ管」の意味・わかりやすい解説

ウォルフ管【ウォルフかん】

中腎輸管ともいう。脊椎動物において発生初期に前腎輸管の一部または全部が発達してできた中腎からの排出管。雄ではこれがさらに分化して輸精管や貯精嚢などになるが,雌では退化し(魚類や両生類では輸尿管となる),代わってミュラー管が発達する。

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世界大百科事典(旧版)内のウォルフ管の言及

【腎臓】より

…中腎が働きだすと不用になる前腎輸管はミュラー管Müllerian ductとも呼ばれ,雄では退化するが雌では存続して輸卵管となる。中腎輸管はウォルフ管Wolffian ductと呼ばれ,中腎が退化する爬虫類以上の動物の雄では輸精管となり,雌では退化する。 外形も動物により異なり,一般には左右1対であるが,軟骨魚類や硬骨魚類のように左右が融合したり,鳥類のように前・中・後葉と3葉に分葉したり,哺乳類の腎臓でも普通にみられるソラマメ型から多くの小腎からなる葉状腎をもつものまで多様である(図3)。…

【性器】より

…すなわち,胎生期の初期に前腎が体の左右に各1個でき,前腎からは,それぞれ1本の前腎輸管が出ている。やがて前腎が退化すると,その後方に中腎(原腎ともいう)ができ,前腎輸管はそのまま中腎輸管となるが,これをウォルフ管Wolffian ductという。そのころ,この管の外側を並行して走るミュラー管Müllerian ductが左右各1本できるが,これら二つの管はその後男女によって異なる運命をたどることになる。…

※「ウォルフ管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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