旁中腎管ともいう。大部分の脊椎動物において,輸卵管や子宮などの雌性の生殖器に分化するもとの生殖管。名称は19世紀のドイツの生理・解剖学者J.P.ミュラーにちなんだもの。ヒトの胚では,発生の第6週ころは男女両性とも,有対性のウォルフ管とミュラー管の2組の生殖管をもつが,女性の場合にはその後の発生で,ウォルフ管が退化し,ミュラー管が発達して,その上部は卵管に,また下部は左右が癒合して子宮と腟になる。この癒合が不完全に起こると,双角子宮や完全重複子宮重複腟のような先天奇形が生ずる。ミュラー管はもともと体腔上皮の縦走陥入として生じ,その頭端は体腔(腹腔)に開いており,この部分が卵管腹腔口となる。男性ではミュラー管は退化して,わずかに頭方端が精巣垂,尾方部が前立腺小室となってその痕跡をとどめる。
→性器
執筆者:藤田 尚男
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…爬虫類以上の脊椎動物では中腎も退化し,さらにその後方に後腎metanephrosが発達して,それが生涯の腎臓,すなわち最終腎として排出作用を営む。中腎が働きだすと不用になる前腎輸管はミュラー管Müllerian ductとも呼ばれ,雄では退化するが雌では存続して輸卵管となる。中腎輸管はウォルフ管Wolffian ductと呼ばれ,中腎が退化する爬虫類以上の動物の雄では輸精管となり,雌では退化する。…
…やがて前腎が退化すると,その後方に中腎(原腎ともいう)ができ,前腎輸管はそのまま中腎輸管となるが,これをウォルフ管Wolffian ductという。そのころ,この管の外側を並行して走るミュラー管Müllerian ductが左右各1本できるが,これら二つの管はその後男女によって異なる運命をたどることになる。すなわち,男児ではミュラー管は大部分が退化,消失してしまうが,ウォルフ管は発達して副睾丸,精管,精囊などを形成する。…
…爬虫類以上の脊椎動物では中腎も退化し,さらにその後方に後腎metanephrosが発達して,それが生涯の腎臓,すなわち最終腎として排出作用を営む。中腎が働きだすと不用になる前腎輸管はミュラー管Müllerian ductとも呼ばれ,雄では退化するが雌では存続して輸卵管となる。中腎輸管はウォルフ管Wolffian ductと呼ばれ,中腎が退化する爬虫類以上の動物の雄では輸精管となり,雌では退化する。…
…やがて前腎が退化すると,その後方に中腎(原腎ともいう)ができ,前腎輸管はそのまま中腎輸管となるが,これをウォルフ管Wolffian ductという。そのころ,この管の外側を並行して走るミュラー管Müllerian ductが左右各1本できるが,これら二つの管はその後男女によって異なる運命をたどることになる。すなわち,男児ではミュラー管は大部分が退化,消失してしまうが,ウォルフ管は発達して副睾丸,精管,精囊などを形成する。…
…解剖学,生理学,発生学,古生物学,医学史など広範な領域にわたって業績をあげた。彼の名を冠するものだけでも,特異的感覚エネルギーの法則,軟骨索,毛毬囊(もうきゆうのう)などあり,生殖器の起源であるミュラー管の記載もおこなっている。組織学でいう結合組織も彼の命名による。…
※「ミュラー管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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