改訂新版 世界大百科事典 「ウグイ」の意味・わかりやすい解説
ウグイ (鯎)
Tribolodon hakonensis
コイ目コイ科の淡水魚。ハヤ,ホンバヤ(東京都),クキ(群馬県),アイソ(栃木県。とくに産卵期),イダ(九州),ジャコ,ハイジャコ(岩手県),ザコ(新潟県),オオガイ,オオゲエ(宮城県。マルタと混称),アカウオ(長野県。産卵期),アカハラ(新潟県。産卵期)など地方名が多い。アカウオ,アカハラなどの方言は産卵期に体側などに現れる赤い縦帯が目だつことによる。日本では北海道から九州の南端近くまでのほぼ全土に分布。川では上流はイワナのすむ渓流の下限付近から現れ,下流は河口近くまで及ぶ。また湖にもすむ。淡水型と降海型とがあり,降海型は内湾や沿岸海域の一部にも及ぶ。全長11~45cm,体は細長く,左右に平たく,うろこは細い。口ひげはない。雑食性で小型の昆虫などをよく捕食する。産卵期は3~7月で,川では中流域の砂れき底に大群をなして集まり,産卵行動を行う。この習性を利用した漁法が各地に見られ,とくに長野県千曲川の〈つけば漁〉は有名。とくに産卵期のものは,長野,栃木,群馬などの各県では食用として珍重される。ウグイ属にはウグイのほかにマルタ,エゾウグイ,ウケクチウグイの3種が日本では知られている。
執筆者:中村 守純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報