婚姻色(読み)こんいんしょく

精選版 日本国語大辞典 「婚姻色」の意味・読み・例文・類語

こんいん‐しょく【婚姻色】

〘名〙 動物繁殖期に限ってあらわれる体色。ふつう雄にみられ、雄性ホルモン支配を受ける。イモリなどの両生類タナゴ類、ウグイ類、トゲウオ類などの魚類などの例がある。広義には鳥類婚衣を含んでいう。

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デジタル大辞泉 「婚姻色」の意味・読み・例文・類語

こんいん‐しょく【婚姻色】

動物の繁殖期にだけ現れる体色。魚類・両生類・爬虫はちゅう類などにみられ、広くは鳥類のものも含めていう。ふつう、雄に顕著。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「婚姻色」の意味・わかりやすい解説

婚姻色
こんいんしょく

動物において主として繁殖期に際だって現れる体色のこと。魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類などの色素胞によっておこる体色変化の場合に普通用いられる。特定の種の成熟した雄に現れることが普通で、雌に現れる場合でも顕著でないことが多い。たとえば、アユ(魚類)の雄やウグイ(魚類)の雌雄では腹部が鮮赤色になり、アカハライモリ(両生類)の雄は尾の側面が紫色になり、ニホントカゲ爬虫類)の雄は頬(ほお)・のどから腹部にかけてが赤くなる。一度に多くの色彩が現れることもあり、繁殖期のヤリタナゴ(魚類)の雄は、背面が緑青色、腹部は最下部が黒色のほかは桃色、頬から胸びれ後方は紅色で、背びれと臀(しり)びれの先端部は赤色である。婚姻色が個体の性を判別する規準となることも多く、その場合とくに性徴として取り扱われる。産卵期にキンギョ(魚類)のえらぶたなどに出る粒々(追い星)や、オビイモリ(両生類)の雄にみられる際だって隆起した背部などは、婚姻色と類似した性徴の例である。これらの性徴は、繁殖期に脳下垂体から分泌される生殖腺(せん)刺激ホルモンによって精巣から分泌される、雄性ホルモンの影響で発現すると考えられている。婚姻色が他の雄を追い払ったり、脅したりする役目や、また雌の服従行動や性行動を促す役割を果たすことが明らかになった例も多い。

[片野 修]

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百科事典マイペディア 「婚姻色」の意味・わかりやすい解説

婚姻色【こんいんしょく】

動物の繁殖期に現れる特有な体色。魚類,両生類,爬虫(はちゅう)類によく発達し,ウグイ,タナゴなどでは腹部が鮮紅色になり,トカゲは腹部が赤みを帯びる。わずかの例外を除けば雄のみに現れ,精巣からの雄性ホルモンに原因する。追星(おいぼし)もこの一種。婚姻色は普通,同種の雄どうしの間では,闘争を解発するリリーサーとなり,同種の雌に対しては配偶行動のリリーサーとなる。
→関連項目オイカワ繁殖期

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世界大百科事典 第2版 「婚姻色」の意味・わかりやすい解説

こんいんしょく【婚姻色 nuptial coloration】

繁殖期になると,特有の体色を示す動物がいる。繁殖期に限って現れるこの体色を婚姻色という。体全体にわたって婚姻色が現れることはほとんどなく,たいていは体の一部が目立つ色に変わる。ふつう雄において顕著であるが,雌においても多少の色彩の変化が認められることが多い。婚姻色は魚類,両生類によくみられ,たとえばタナゴの仲間やトゲウオの一種イトヨでは,雄のあごの下から腹部にかけての皮膚が赤色に変わる。タナゴやアユなどの淡水魚では,えらぶたや鰭条(きじよう)に真珠様の白色小体が多数現れるが,これはとくに追星pearl organとよばれる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「婚姻色」の意味・わかりやすい解説

婚姻色
こんいんしょく
nuptial coloration

魚類,両生類,爬虫類で,わずかな例外を除いて,繁殖期に雄の全身や腹面の体色が著しく変化することをいう。精巣から出る雄性ホルモンによる。求愛行動で解発刺激の役割をすることも多い。

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ダイビング用語集 「婚姻色」の解説

婚姻色

繁殖期になると相手を誘うためにひときわきれいな色に体色変化したり独特の斑文が現れる魚がいる。その変わった色や模様のことを指す言葉。雄が婚姻色を纏う種もあればその逆の種もある。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

世界大百科事典内の婚姻色の言及

【体色変化】より

…たとえば,隠蔽色のうち,被食者のいわゆる保護色では,背地の色あるいは紋様に適応する速い生理学的変化の例が多く知られている。標識色の代表例である婚姻色は繁殖期に現れる美しい彩色であり,形態学的変化に属する。形態学的変化は一般的に内分泌系の制御による。…

※「婚姻色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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