インド・ヨーロッパ語族インド語派の言語の一つ。デリーに最初のムスリム王朝が樹立されたのは1206年であるが,イスラム教徒のインド亜大陸内部への侵入はすでに10世紀から始まっていた。当時パンジャーブからデリー周辺の広範な地域で使用されていたインド・アーリヤ語系の方言に,これら外来者のペルシア語,アラビア語などの語彙が混入して徐々に発達したのがウルドゥー語である。基礎となった方言はパンジャービー,カリー・ボーリーKhaṛī-Bōlīなどいくつかの説がある。ウルドゥー語はインドでは標準語の一つとして北インド一帯を中心に数千万の使用者があり,パキスタンでは国語としての普及活動が熱心に行われている。ウルドゥー語はヒンディー語ときわめて類似しているが,ペルシア文字を改良した字体を用いて右から左へ横書きする。名称のウルドゥーはムガル朝皇帝シャー・ジャハーン時代の通称ザバーネ・ウルドゥーエ・モアッラーエ・シャージャハーナーバード(〈高貴な陣営の言葉〉の意)に由来する。
執筆者:鈴木 斌
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アーリア系諸語の中央グループに属する言語で、パキスタンの公用語であると同時に、インドの公用語でもある。現在のデリーを中心とする地方で話されていたカリー・ボーリー語Khaī-Bōlīは、14世紀以降デカン高原に出現したイスラム王朝が発達させた宮廷文学語ダクニーDakhnīの影響を受けつつ、18世紀初頭までに北インド各地の王族ならびにイスラム教徒上層階級の共通語となっていった。ヒンディー語とまったく同じ文法構造をもちながらも、ペルシア語やアラビア語からの借用語をふんだんに取り入れている。またペルシア文字で書き表すウルドゥー語は、デリーに都を定めたムガル王朝の公用語として18世紀後半からその地位を高め、北インド各州の法廷語や教育語ともなる一方、数多くの優れた文学作品を生み出していった。なお、「ウルドゥー」とは本来「軍営地」を意味するトルコ語であるが、イスラム軍の共通語に対する名称となっていった。
[奈良 毅]
『鈴木斌・麻田豊著『日本語ウルドゥー語小辞典』(1992・大学書林)』
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インド・アーリヤ諸語の一つ。ムスリム勢力のインド進出後,パンジャーブ地方からデリー周辺で使用されていた言語が基礎となり,これにペルシア語,アラビア語などの語彙が取り入れられて発達した。ウルドゥーとは「陣営」の意。ペルシア文字に一部改変を加えた文字で表記する。北インドで話し言葉,書き言葉として広範に用いられていたが,20世紀初めまでには政治的背景から,ウルドゥー語に代わりヒンディー語の影響力が強まった。パキスタン独立後は,その国語に指定された。
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…農村部から都市部への人口移動はかなり多く,また都市部のなかでは人口10万人以上の大・中都市の膨張が目だっている。 主要な言語として憲法にあげられたのはアッサム語(アッサミー)Assamī,ベンガル語(ベンガリー),グジャラート語(グジャラーティー)Gujarātī,ヒンディー語,カンナダ語Kannada,カシミール語(カシミーリー)Kashmīrī,マラヤーラム語Malayālam,マラーティー語,オリヤー語Oriyā,パンジャーブ語(パンジャービー)Punjābī,サンスクリット語,シンド語(シンディー)Sindhī,タミル語,テルグ語,ウルドゥー語の15であったが,92年の改憲によってこれにコンカン語,マニプル語,ネパール語が加わった。カンナダ,マラヤーラム,タミル,テルグの4語がドラビダ系(ドラビダ語族)に属し,マニプル語はシナ・チベット系に,他はインド・アーリヤ系(インド・ヨーロッパ語族)に属している。…
…正式名称=パキスタン・イスラム共和国Islami Jamhuria‐e‐Pakistan∥Islamic Republic of Pakistan面積=79万6095km2(ジャンムー・カシミールなどを除く)人口(1996)=1億人(ジャンムー・カシミールなどを除く)首都=イスラマーバードIslamābād(日本との時差=-4時間)主要言語=ウルドゥー語通貨=パキスタン・ルピーPakistani Rupeeインド亜大陸の北西部にある共和国。正式国名に〈イスラム〉を明記している点に特徴がある。…
…1991)もベンガル人が圧倒的多数を占める地域だからである(ベンガル)。少数者集団としては,ウルドゥー語を母語とするビハーリー・ムスリムが約40万人と推定され,この他に総数89万7828(1981)を数える諸部族が,チッタゴン丘陵地区やマイメンシンフ県を中心に居住する。宗教別人口(1981)では,ムスリム(イスラム教徒)が7649万で総人口の86.6%を占めて卓越し,これに続くのがヒンドゥー教徒の1057万で12.1%を占める。…
…後者の用法のほうがより一般的である。 ヒンディー語とウルドゥー語もヒンドゥスターニー語を基に成ったので,これら3言語の基本的な構造に大差はない。しかしヒンドゥスターニー語が市井の話し言葉であるのに対して,ヒンディー語がデーバナーガリー文字で表記され,サンスクリットの語彙を多用するヒンドゥー教徒の書き言葉として,またウルドゥー語がペルシア文字で表記され,ペルシア・アラビア語語彙を多用するイスラム教徒の書き言葉としての性質を強めるにつれ,両者は話し言葉ヒンドゥスターニー語から別々の方向に遠く離れていった。…
…また建築面でもアクバル時代のアーグラ近郊のファテープル・シークリーの宮殿やシャー・ジャハーン時代のデリー城,タージ・マハルにみられるように壮大な建築物がつくられた。宮廷内や北インドの一般ムスリムの間では,ペルシア語から発達しヒンディー語の語彙を取り入れたウルドゥー語が日常的に話され,ウルドゥー文学作品も現れている。宗教面ではムガル支配層の間にはかなりのヒンドゥー教徒も混じっており,思想的にも後世みられるような宗教的な厳格主義はまだ現れていない。…
※「ウルドゥー語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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