エノキタケ(読み)えのきたけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エノキタケ」の意味・わかりやすい解説

エノキタケ
えのきたけ / 榎茸
[学] Flammulina velutipes (Fr.) Sing.

担子菌類、マツタケ目キシメジ科の食用キノコ。栽培菌として知られる。栽培エノキタケは、そうめんに似たもやし状のキノコであるが、野生のエノキタケは、傘は径3~5センチメートル、栗(くり)色ないしは黄褐色で、湿ると粘質を帯びる。茎は叢生(そうせい)し、表面は黒褐色のビロード状の毛をつける。ひだは淡いクリーム色で、胞子紋は白。晩秋から真冬にかけて、広葉樹の枯れ枝や切り株に群生する。分布は世界的に広く、栄養分はあまりないが、口当りがよく、各国で食用にされる。冬のキノコなのでユキノシタ、ユキモタセという地方名があり、粘るのでナメコともよばれる。欧米ではwinter mushroomまたはChristmas mushroomと俗称される。

[今関六也]

栽培

普通は瓶に栽培される。瓶栽培には500cc入りの広口瓶が使われる。まず鋸(のこぎり)くずと米糠(こめぬか)を4対1の割合で混ぜ、水を加えたのち、固く絞って、水がにじむ程度に湿らせる。これを瓶に詰め、綿で栓をしてから蒸気殺菌をする。殺菌には高圧釜(がま)を使い、120℃で1時間ほど熱を加える。冷却したのち、清潔な室内で綿栓をとり、炎で殺菌したピンセットなどで種菌を瓶内に移し、ふたたび綿栓をする。その後20℃から25℃の室に置くと、約1か月で菌糸が瓶の底まで伸びる。やがて菌糸の上にキノコの小さなつぼみができるので、瓶を10℃から15℃の薄暗い室に移し、綿栓をとっておく。キノコは瓶の口から束になって伸び出す。この際、束の形が崩れないように筒形に巻いた紙を瓶の口にはめ込むとよい。換気が乏しい密閉された暗い室では傘の発達が悪く、色もつかないので、栽培品はそうめんを束ねたようなもやし状になり、自然のものとはまったく形が変わる。天然生のほうが、形や色はもとより、風味もはるかに勝る。長野県北部が主要生産地として知られる。種菌は食用キノコ種菌業者から購入する。

[今関六也]


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食の医学館 「エノキタケ」の解説

エノキタケ

《栄養と働き&調理のポイント》


 別名を「ナメタケ」といい、キシメジ科のキノコ。晩秋から初冬にかけてエノキ、カキイチジクポプラブナなどの広葉樹の枯れ木に密生しています。
 現在出回っているものは栽培もので、天然ものとは別物です。栽培ものは白くて細長い形ですが、野生のものは大きくて褐色をしています。
○栄養成分としての働き
 栄養成分としては、食物繊維、ビタミンB1、B2ナイアシンが豊富。エネルギー代謝に欠かせない栄養素であるB1は、生シイタケよりも多く含んでいます。
 かっけ予防や糖質の代謝をよくして疲労回復に役立ちます。
 B2、ナイアシンは湿疹(しっしん)や吹き出ものといった肌のトラブルを解消する働きをもっています。
 含有量の多い食物繊維は肥満、脂質異常症、糖尿病の予防にも有効。
 また、エノキタケのエキスは、肺がんをはじめ各種のがん予防に有効だということもわかっています。
 そのほか、フラムトキシンというたんぱく質の一種に強心作用があり、グリホリン、ネオグリホリンというシイタケとは異なる含有成分がコレステロール値を低下させ、動脈硬化予防に役立つといわれています。

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改訂新版 世界大百科事典 「エノキタケ」の意味・わかりやすい解説

エノキタケ (榎茸)
Flammulina velutipes(Fr.)Karst.

担子菌類キシメジ科のキノコ。冬季に発生するところからwinter mushroomと呼ばれ,ユキノシタ,ユキモタセの異名もある。野生の子実体では,かさははじめ半球形,のちまんじゅう形に開き,径2~8cm。表面は粘性があり黄褐色,周辺部は淡色。ひだは白色でやや疎。茎は繊維質で強靱,暗褐色で短い密毛におおわれる。胞子は楕円形~円柱形,5~7.5μm×3~4μm。人工栽培では,普通おがくず培地により瓶を用いて暗所で栽培されるので,育ったキノコは白色でもやし状になる。分布は全世界的で,日本では主として秋~早春に広葉樹の枯幹・切株上に群生する。適度な粘性をもち,もやし状のキノコはなべ料理に好適である。最近は歯切れの良さから野外で榾木(ほだぎ)栽培されたものが好まれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エノキタケ」の意味・わかりやすい解説

エノキタケ(榎茸)
エノキタケ
Flammulina velutipes

担子菌類マツタケ目シメジタケ科。晩秋から春にかけて,エノキ,カキ,ポプラその他の広葉樹の枯れた株に発生する。したがって種々の広葉樹の材を切り,榾木 (ほたぎ) として栽培することができる。最近はオガクズを使って工場生産が盛んに行われている。傘は初めまんじゅう形,のちに平らに開く。径2~8cm,表面は湿っているとき粘性があり,黄褐色ないしくり色で中央が濃く,縁近くは淡い色をしている。裏面には白いひだがある。柄は硬く,太さ2~8mm,長さ2~8cmで,濃い褐色で短い毛が密生している。胞子紋は白い。食用キノコとして普及している。日本全土に産し,北アメリカ,ヨーロッパ,オーストラリア,中国,シベリアに広く分布する。

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百科事典マイペディア 「エノキタケ」の意味・わかりやすい解説

エノキタケ

世界に広く分布するキシメジ科のキノコ。林,庭などの広葉樹に束生し秋から早春に見られる。かさは径2〜8cm,褐色で粘性著しく,ひだは白く,柄は繊維質で,下半部に短毛があり暗褐色。ほた木やおがくずで人工栽培される。市販品は暗所で栽培するため,かさが小さく柄が白く長い。〈ナメコ〉ともいわれるが,ナメコとは別種。美味。
→関連項目キノコ

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栄養・生化学辞典 「エノキタケ」の解説

エノキタケ

 [Flammalina velutipes].ハラタケ目キシメジ科エノキタケ属に属する人工栽培により作られたものが広く食用に供されている.

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世界大百科事典(旧版)内のエノキタケの言及

【キノコ(菌∥蕈∥茸)】より

…第2は木粉栽培(菌床栽培,おが粉栽培)で,木粉と米ぬかとを体積比3対1で混ぜてプラスチック製の瓶に入れ,高圧蒸気で殺菌したものを培地に使う方法である。長野県中野市を中心にエノキタケ栽培で開発,発展した。エノキタケでは培地に種菌を接種後,18℃の部屋に20日おいて菌をまんえんさせてから,13℃の部屋へ移してキノコを発生させる。…

※「エノキタケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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