日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユキノシタ」の意味・わかりやすい解説
ユキノシタ
ゆきのした / 雪下
[学] Saxifraga stolonifera Curtis
ユキノシタ科(APG分類:ユキノシタ科)の半常緑多年草。春、細い走出枝を多数広げ、節や先に小苗をつけて繁殖する。葉は腎円(じんえん)形多肉質で柔らかく、長短の白毛があり、裏面は赤色を帯びる。表面は白雲状の斑(ふ)のあるものもある。乾期や冬は、葉柄を地表に伏せる。初夏、20センチメートル以上の花柄を出し、円錐(えんすい)状に花をつける。花弁は細く5枚、上方3枚は小さく濃紅色の斑点(はんてん)があり、下方2枚は大形で大小不同、白色である。薄暗い陰地に満開になるとみごとである。日本、および中国原産で、湿った林内の地表に生え、石垣の間などでよく育つ。古来民間薬として、もみ汁や葉を火であぶったものを幼児のひきつけ、やけど、かぶれなどに重用するとともに、食用にもされる。近縁のダイモンジソウやジンジソウなどは、渓流岸の湿った岩面に生育することが多い。
[吉江清朗 2020年3月18日]
文化史
分布はほぼ人里に限られ、中国からの帰化植物とみられる。江戸時代に広がり、いけ花にも使われた。『多識編』(1612)では、漢名の虎耳草(こじそう)に登良乃美美(とらのみみ)と訓じる。ユキノシタの名は『立華正道集(りっかしょうどうしゅう)』(1684)が古く、水際に生える草木中にあげられている。『拠入花伝書(なげいればなでんしょ)』(1684)は石荷をあて、『花壇地錦抄(ちきんしょう)』(1694)は「木かげ又はぼく(木)石等に植えてよし」と述べる。中村浩は語源を雪の舌とみた(『植物名の由来』)。
[湯浅浩史 2020年3月18日]