エポキシ化(読み)えぽきしか(英語表記)epoxidation

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エポキシ化」の意味・わかりやすい解説

エポキシ化
えぽきしか
epoxidation

C=C二重結合エチレン結合)に酸素1原子が付加して3員環のエポキシドエポキシ化合物)を生成する反応をいい、次の一般式で示される。


この反応は酸化反応の一種であり、実験室的には、酸化剤としてm-クロロ過安息香酸過酢酸などの有機過酸が用いられている。通常、ベンゼンクロロホルム、四塩化炭素などの不活性溶媒中で行われ、シス付加がつねにおこり、トランス体のアルケンからはトランス体のエポキシド、シス体のアルケンからはシス体のエポキシドが得られる。工業的にはエチレンのエポキシ化がもっとも重要であり、エチレンと空気中の酸素を銀触媒の存在下で気相反応させて、エチレンオキシドを合成している。エチレン以外のオレフィンの工業的エポキシ化は、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどを酸化剤として用い、モリブデンバナジウムタングステンなどを触媒として行っている。

[廣田 穰]

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改訂新版 世界大百科事典 「エポキシ化」の意味・わかりやすい解説

エポキシ化 (エポキシか)
epoxidation

C=C二重結合に対し,適当な酸化剤を作用させてオキシラン(エポキシド)を合成する反応をいう(式(1))。一般に,アルケンの場合,塩化メチレン,ベンゼンなどの不活性溶媒中で,m-クロロ過安息香酸,過酢酸などの有機過酸を酸化剤として用いる(式(2))。C=C結合にカルボニル基などの電子求引基が付くと,もはや有機過酸ではエポキシドは生成しないが,アルカリ性過酸化水素で処理すると,このような求電子性C=C結合でもエポキシ化される(式(3))。最近では,エポキシ化の条件として,t-ブチルヒドロペルオキシド(CH33COOH(tBuOOH)を酸化剤とし,バナジウムまたはモリブデン化合物を触媒に用いる方法が盛んに用いられるようになった。tBuOOHは過酸としては非常に安定で,通常の条件下で安全に取り扱え,反応がきわめて立体選択的であるという利点がある。この方法は発見者シャープレスK.B.Sharplessにちなんでシャープレス酸化と呼ばれ,不斉エポキシ化反応にも利用される。


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化学辞典 第2版 「エポキシ化」の解説

エポキシ化
エポキシカ
epoxidation

炭素-炭素二重結合にO 1個が付加して,1,2-エポキシドが生成する反応をいう.普通,エポキシ化剤として有機過オキシ酸を用い,不活性有機溶媒中で行われる.有機過オキシ酸としては,過酢酸,メタクロロ過安息香酸,ジペルオキシフタル酸,過ギ酸トリフルオロ過酢酸などが使われる.

過オキシ酸を用いないエポキシ化としては,オレフィンに次亜ハロゲン酸HOXを作用させてハロヒドリンとし,これをアルカリで処理する方法や,

エテンでは,酸素とともに加熱しながら銀触媒上を通してエチレンオキシドをつくる方法がある.

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栄養・生化学辞典 「エポキシ化」の解説

エポキシ化


 図のようにエポキシドを作ること.

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