イギリスの小説家、批評家。本名エリック・ブレア。税関吏の息子としてインドに生まれ、8歳で帰国。授業料減額で寄宿学校に入り、奨学金でイートン校を卒業したが、大学に進まずにただちにビルマ(ミャンマー)の警察官となり、植民地の実態を経験。その贖罪(しょくざい)意識もあって自らパリ、ロンドンで窮乏生活に身を投じたのち、教師、書店員などをしながら自伝的ルポルタージュ『パリ、ロンドン零落記』(1933)や、植民地制度がもたらす良心的白人の破滅を描いた『ビルマの日々』(1934)などを発表。このころから社会主義者となり、「左翼ブッククラブ」のために失業炭鉱地域のルポルタージュ『ウィガン波止場への道』(1937)を書いた。1936年からスペイン内戦に共和側として参加したが負傷。『カタロニア讃歌(さんか)』(1938)はここで行われた激しい内部闘争の実態の報告、糾弾の書である。第二次世界大戦中はBBCで極東宣伝放送を担当した。戦争中にすでに同盟国ソ連のスターリン体制を鋭く戯画化した動物寓話(ぐうわ)『動物農場』を執筆、戦争直後の1945年に出版、一躍ベストセラー作家となった。この年妻を失い、彼自身も宿痾(しゅくあ)の肺結核が悪化してロンドンの病院に入院し、ここで、言語、思考までを含めた人間のすべての生活が全体主義に支配された世界を描いた未来小説『一九八四年』(1949)を完成した。この最後の2作は現代社会の全体主義的傾向を批判、風刺した文学として重要なものであるが、その根にあるものはきわめてイギリス的で良識的な思想伝統である。彼はまた時代の問題と先鋭に格闘した優れたエッセイストであり、とくにスペイン内戦以後は、反全体主義的ではあるが単なる保守主義に堕さない柔軟かつ強靭(きょうじん)な立場から、数多くの優れた評論を精力的に発表した。これらの大部分は死後四巻本の評論集にまとめられている。
[鈴木建三]
『鶴見俊輔他訳『オーウェル著作集』全4巻(1971・平凡社)』▽『小野寺健編・訳『オーウェル評論集』(岩波文庫)』
イギリスの小説家。本名エリック・アーサー・ブレアEric Arthur Blair.。インド税関吏の子としてベンガルに生まれ,まもなく父の退官により帰国,奨学金を得てイートンを卒業。大学には進まずビルマ(現,ミャンマー)の警察官となり(1922-27),植民地の実態を経験,贖罪意識もあってパリ,ロンドンで放浪生活をしたのち,教師,書店員などをしながら自伝的ルポルタージュ《パリ,ロンドンどん底生活》(1933)や,植民地制度のもたらす良心的な白人の自滅を扱った小説《ビルマの日々》(1934)などを著した。1935年ころから社会主義者となり,レフト・ブック・クラブのために失業炭坑地域のルポルタージュ《ウィガン波止場への道》(1937)を書いた。36年からスペイン内戦に共和側として参加,《カタロニア賛歌》(1938)はここで行われた戦闘と内部闘争を的確な観察眼とみごとな散文で描いた出色のエッセーである。第2次大戦中はBBCの極東宣伝放送を担当した。すでに戦争中からスターリン治下のソビエトを戯画化した《動物農場》(1945)を執筆,戦争直後に出版し,英米でベストセラーになった(日本でも占領下の第1回翻訳許可書であった)。次いで人間の言語,思考まで含めたすべての生活が全体主義に完全に支配された世界を描いた《1984年》(1949)を発表した。この2作は左翼の全体主義を批判した文学として重要であるが,良識的イギリス人の伝統に忠実な一面も示している。また,とくにスペイン戦争以降,コミュニスト陣営に対する批判の姿勢を強めたが,社会主義的な方向でものを考える強靱なエッセーを精力的に発表し,死後4巻本の評論集にまとめられた。
執筆者:鈴木 建三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…こうした要因の絡み合いによって,〈上流〉〈中流〉〈労働者〉に大別され,しかも3者それぞれの内部が微妙なニュアンスで〈上層〉〈中層〉〈下層〉と分類されて,重層的な構成をとっている。G.オーウェルは,自らをジェントルマンの最下層である〈上層中流階級の下lower‐upper‐middle class〉の出身として,その点と植民地官吏としての体験に自分の階級意識の原点を見いだしたが,彼の著作にはイギリスの階級意識の複雑さとその多面的な反映を読み取ることができる。 たしかにイギリスの支配階層は,歴史的にみてフランスなどとは異なり特権をもたず,また長子相続制のゆえに貴族の長男以外は実業界などに進出したし,逆に実業で産をなした人たちが上昇して支配階層に加わることが可能であったため,閉鎖的なカーストを形成することはなかった。…
…イギリスの小説家G.オーウェルの逆ユートピア小説。1949年刊。…
… 第2には,反ユートピア(ディストピア)論の登場である。J.ロンドン《鉄のかかと》(1907),E.I.ザミャーチン《われら》(1924),A.L.ハクスリー《すばらしい新世界》(1932),G.オーウェル《1984年》(1949)などの代表例が挙げられる。これらは,理想国家として建設されたはずのユートピアが,かえってその強大な支配力によって人間を不自由化する,というモティーフにもとづいており,社会主義計画経済やケインズ主義政策などの定着の反面であらわになった矛盾に,敏感に反応した文学的表現といえる。…
※「オーウェル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新