カデンツァ(英語表記)cadenza

翻訳|cadenza

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

カデンツァ
cadenza

音楽用語。 (1) 一般には,曲の終止の前に,独奏者 (独唱者) が演奏技巧を十分に発揮できるように挿入された装飾的な部分。この技法は初め声楽曲において用いられたが,のちに器楽曲,特に協奏曲に取入れられた。再現部が終りコーダに入るところで,伴奏部が属音上の I46 の和音を奏すると,独奏楽器が主題に基づく自由な変奏を無伴奏で行い,十分名人芸を披露したあと,普通,属7の和音上の長いトリルを奏し,それに誘導されてオーケストラが入り,コーダを奏して曲を終る形をとる。初期には演奏者が独自のカデンツァを用意したが,ベートーベン以後あたりから,作曲者があらかじめ作曲する風潮が強まった。 (2) 「終止形」の意。ラテン語の cadere (落下する) からきた言葉。この意味では通例ドイツ語のカデンツが用いられる。

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デジタル大辞泉の解説

カデンツァ(〈イタリア〉cadenza)

楽曲の休止・終結を形作る旋律や和声の定型。カデンツ。
楽曲の終結部で、独唱者または独奏者の演奏技巧を発揮させるために挿入される、華美な装飾的楽句。カデンツ。

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百科事典マイペディアの解説

カデンツァ

オペラのアリアやコンチェルト(協奏曲)において,曲や楽章を閉じる前に演奏される技巧的で即興的な部分。本来は演奏者の即興に任されていたが,ベートーベン以後,作曲家がカデンツァを書くのが普通になった。また,過去の大家の譜例に従って演奏されることも多い。
→関連項目ベートーベン

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世界大百科事典 第2版の解説

カデンツァ【cadenza[イタリア]】

〈終止形〉を意味する音楽用語であったが,16世紀末ごろから終結部におかれた即興的な技巧的楽句の意味で用いられるようになった。この技巧は18世紀のオペラにおいて発展をみせたが,とくにA.スカルラッティをはじめとするナポリ楽派のオペラにおいてはひとつの様式感を形成するまでに至った。そのカデンツァは即興性を特徴とし,結尾部(コーダ)に入る前の4‐6の和音の上に行われるのが通例であった。これは後の古典派以降の協奏曲のカデンツァの場合と同様である。

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大辞林 第三版の解説

カデンツァ【cadenza】

楽曲の終止部分の直前に、独唱者や独奏者が妙技を発揮するよう挿入された華麗な装飾的部分。元来は演奏者の即興演奏であったが、次第に作曲者が書くようになった。カデンツ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カデンツァ
かでんつぁ
cadenzaイタリア語

音楽用語。
(1)和声終止形のこと。和声終止形には、大別して、完全終止、不完全終止、偽(ぎ)終止の3種類がある。完全終止とは、基本位置での属和音と主和音の連続をさし、厳密には上声部が強拍で、主音をとる場合に限られる。また、基本位置での下属和音と主和音の連続も含むことができる。楽曲の終わりや各部分を閉じる箇所に用いられ、満足な完結性を与える。不完全終止とは、どちらか一方が転回形の属和音と主和音の連続をさすが、英語の慣用では半終止もこれに含める。半終止とは、通常、主和音から属和音への進行をさすが、主和音以外の和音からの進行も含まれる。半終止は、大楽節構造における前楽節のようなフレーズの切れ目に置かれ、後続部分への連結性をもっている。偽終止とは、属和音から主和音以外の和音へ行く終止で、度の和音への進行が代表的である。フレーズの途中にあって軽いくぎりとなり、終止感というよりは、むしろ終止の期待を裏切る効果をもっている。
(2)カデンツァ・フィオリトゥーラcadenza fiorituraやカデンツァ・ディ・ブラブーラcadenza di bravuraの略。独奏者や独唱者の名人芸的技巧を示すべく、コーダ(楽曲終結部)の前に挿入された装飾的楽句をさす。元来、演奏者の即興演奏であったが、ベートーベン作曲のピアノ協奏曲第5番(「皇帝」)あたりから、作曲者によって書かれるようになった。[黒坂俊昭]

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世界大百科事典内のカデンツァの言及

【即興演奏】より

… 主題を与えられて行う即興演奏は,古典派,ロマン派の時代に入ってからも盛んに行われ,タルティーニ,クレメンティ,モーツァルト,ベートーベン,リスト,パガニーニなど即興演奏の名手が続出した。18,19世紀の協奏曲のカデンツァは,演奏家の自由にゆだねられた部分で,このカデンツァの部分は,各演奏家が自分の高度なアクロバット的な名人芸をくりひろげる場になった。しかし19世紀の後半から,内容の空虚な技巧中心の即興演奏に対して反省がなされるようになり,演奏は,楽譜に忠実な再現行為であるという主張が主流を占めるようになる。…

※「カデンツァ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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