カヌー競技(読み)カヌーきょうぎ(英語表記)canoeing

精選版 日本国語大辞典 「カヌー競技」の意味・読み・例文・類語

カヌー‐きょうぎ ‥キャウギ【カヌー競技】

〘名〙 漕艇競技の一つ。オリンピック種目カナディアンカヌーカヤックの二種目がある。

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デジタル大辞泉 「カヌー競技」の意味・読み・例文・類語

カヌー‐きょうぎ〔‐キヤウギ〕【カヌー競技】

水上スポーツの一。競技用のカヌー(カヤックカナディアンカヌー)を使用して、技術や速さを競う。種目には、スプリントスラロームなどがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カヌー競技」の意味・わかりやすい解説

カヌー競技
かぬーきょうぎ
canoeing

水上スポーツの一種。湖沼などの静水や、急流の川で、艇首、艇尾がとがっていてパドル(小さな櫂(かい))で漕(こ)ぐ舟に乗り、スピードを競い合う競技。日本では、カヤックKayak(略号K)とカナディアン・カヌーCanadian canoe(略号C)の2種類を総称してカヌーとよんでいる。元来は、短くて幅の広い櫂で操る原始的な小舟のことをカヌーといい、古くから世界各地で広く利用されてきた。

[中田弘良 2019年4月16日]

歴史

スポーツとしてのカヌーイングがいつごろから始められたかは明白ではないが、19世紀初頭にはすでにイギリスでは一種のカヌー競技が行われていたようである。1865年、スコットランドの弁護士ジョン・マクレガーJohn MacGregor(1825―1892)が自作の「ロブ・ロイRob Roy」というカヌーで、スエズ運河、ヨルダン川や、バルト海などヨーロッパから中東の水域を漕ぎ回ったことから、これに刺激されて、イギリスではいっそう盛んになったと伝えられている。明治の初期、マグレガーは日本へも来て相模川(さがみがわ)の上流から相模湾に出て東京湾まで漕いだという記録がある。1866年にはロンドンにロイヤル・カヌー・クラブが設立され、以後カヌー競技は諸国に広まり、1924年には国際カヌー連盟International Canoe Federation(ICF)が創設された。同年の第8回オリンピック・パリ大会にはオープン種目として参加、1936年の第11回ベルリン大会から正式種目として登場した。

[中田弘良 2019年4月16日]

日本のカヌー競技

日本では、オリンピック・ベルリン大会に参加した役員が、第12回東京大会(1940年開催予定、第二次世界大戦のため中止)に備えて視察見学し、カヌーを購入してきてから始められた。1937年(昭和12)に東京市役所と専修大学が初の対抗レースを東京・荒川の尾久(おぐ)コースで開催した。翌1938年には日本カヌー協会が創立され、第二次世界大戦中は日本漕艇(そうてい)協会(現、公益社団法人日本ボート協会)に所属していたが、1960年(昭和35)3月に独立、1980年には社団法人日本カヌー連盟Japan Canoe Federation(JCF。2010年に公益社団法人に移行)となった。カヌー競技は、1982年の島根大会から国体の正式種目として採用され、オリンピックには、1964年の東京大会から参加するようになった。

[中田弘良 2019年4月16日]

競技方法と種目

カヤックは、漕ぎ手が艇の中央に進行方向に向かって長座(両足を前に伸ばした状態で座ること)の姿勢で乗り、両端にブレード(水かき)のついたパドルで左右交互に漕いで進む。カナディアン・カヌーは、漕ぎ手が艇の中央に片膝(ひざ)を立てて(スラロームやワイルドウォーターwild waterの場合は両膝を立てる)乗り、片方だけにブレードのついたパドルで片側だけを漕いで進む。カナディアン・カヌーはカヤックと違ってラダー(舵(かじ))がないので、おもにJストローク(水面にJの字を書くように漕ぐ)で艇を直進させる。

 おもな競技としては、(1)カヌースプリント、(2)カヌースラローム、(3)カヌーワイルドウォーター、(4)その他のもの、がある。

(1)カヌースプリントは、湖沼などの静水面で速さを競う。クルー乗組員)の人数により、カヤックではカヤック・シングル(K1)、カヤック・ペア(K2)、カヤック・フォア(K4)があり、男女ともにそれぞれ200メートル、500メートル、1000メートル、5000メートルの種目がある。カナディアン・カヌーにも、カナディアン・シングル(C1)、カナディアン・ペア(C2)、カナディアン・フォア(C4)があり、それぞれ200メートル、500メートル、1000メートル、5000メートル(C4はなし)の種目がある。200メートルリレー(男子K1、C1、女子K1)もある。

 競技の方法は、1000メートルまでの種目はスタートラインに9隻のカヌーを並べ、「レディ・セット・ゴー」の合図で一斉にスタートし、艇首がいち早くゴールラインに入った者を勝者とし、予選(略号H)、敗者復活戦(RH)、準決勝(SF)、決勝(F)の順で勝者を決する。5000メートル以上のレースは回航コースを使用し、参加者全員が一斉にスタートして勝者を決する。国内では各都道府県の大会をはじめとして、全日本学生選手権大会、日本選手権大会など多くの競技会が行われている。国際的なものにはヨーロッパ選手権大会、世界選手権大会、オリンピック大会などがある。

(2)カヌースラロームは、回転技術を競い合う。自然および人工的につくられた急流250~400メートル間にゲートを15~25個設置し、直進、回り込み、後退など指示どおりに、しかもゲートに触れることなく正確に速く漕ぎ下る競技である。1人ずつ時間を置いてスタートし、所要時間と各ゲートのペナルティー・ポイント(ゲートに触れたり、通過しなかったときに科せられる罰点)の合計のもっとも少ない者を勝者とする。試技は2回行い、よいほうを最終成績とする。種目としては、男女ともK1、C1、C2と、それぞれのチームレース(3隻で1チームとなる)が行われる。

(3)カヌーワイルドウォーターは、急流の川で速く漕ぎ下り競い合う。スラロームと同じようなコースで長い距離をできるだけ速く漕ぎ下る競技で、スタートの方法や種目はスラロームとまったく同じである。ただし、試技は1回のみである。

(4)その他のものとして、プールのように区画された水面でカヌーに乗ったままボールを奪い合ってゴールに投げ入れるカヌーポロ、カヌーにセールを張ったカヌー・セーリング、海で漕ぐことを楽しむシー・カヤック、波乗りを楽しむカヌー・サーフィン、団体で遠漕するカヌー・ツアリングなど、多くの競技や楽しみ方がある。また、比較的新しい分野であるカヌー・カヤック・フリースタイルは、45秒間に、決められたスポットとよばれる波やホール(落ち込み)のある場所で、カヤックを水車のように回転させるなど、さまざまなトリック(技)を繰り出し、パドリングや操艇技術を競う競技。「水上のロデオ」ともいわれる。

[中田弘良 2019年4月16日]

世界と日本の動向

伝統的にカヌー競技の強い国は、ヨーロッパに多い。そのなかでも圧倒的な強さを誇るのがドイツである。ヨーロッパ以外では、カナダ、中国などが競技実績があるが、日本も選手と指導者が育ってきており成績が向上している。おもな日本選手の活躍は次のとおりである。

 1968年(昭和43)7月、競技力向上を目標として、当時、大正大学の山口徹正(やまぐちてつまさ)(1947― )と東京女子体育大学の岡本敬子(おかもとけいこ)(1945― )の2名をヨーロッパ選手権大会(デンマークのコペンハーゲン)と国際カヌーレガッタ大会(ルーマニアのスナゴフ)に派遣し、中田弘良(なかたひろよし)(1935― )が監督を務めた。その後、中田はカヌースラローム・ヨーロッパ選手権大会(フランスのブルグ・セント・モーリス)を視察し、スラロームとワイルドウォーター競技の資料を日本に持ち帰った。

 1972年のオリンピック・ミュンヘン大会では、スラローム競技(世界初の人工コース)のK1に成田昌憲(なりたしょうけん)(1947― )が初参加。1984年のオリンピック・ロサンゼルス大会では、井上清登(きよと)(1957― )がC1・500メートルで6位に入賞した。

 1999年度(平成11)フラットウォーター・レーシング(現在はカヌースプリントに変更)、ジュニア・カヌー世界選手権大会(クロアチア)で安保泰斗(あんぽたいと)(1981― )がC1・500メートルで3位となった。しかし、その後オリンピックや世界選手権では、入賞はするがメダルの獲得は困難な時期が続いた。

 2008年(平成20)オリンピック・北京(ペキン)大会では、竹下百合子(たけしたゆりこ)(1988― )がスラローム女子K1で4位に入り(当時はオリンピックでの最高位)、竹屋美紀子(たけやみきこ)(1980― )・北本忍(きたもとしのぶ)(1977― )組がK2・500メートルで5位入賞、竹屋・北本・鈴木祐美子(すずきゆみこ)(1976― )・久野綾香(くのあやか)(1987― )組がK4・500メートルで6位入賞した。2010年のカヌースプリント世界選手権(ポーランド)では、北本忍がK1・200メートルで3位銅メダルを獲得。同2010年のアジア競技大会(中国の広州)では、松下桃太郎(まつしたももたろう)(1988― )がK1・200メートルで1位、松下・水本圭治(みずもとけいじ)(1988― )組がK2・200メートルで1位となり、北本忍がK1・200メートルで1位を獲得した。また2016年のオリンピック・リオ・デ・ジャネイロ大会では、スラローム競技で羽根田卓也(はねだたくや)(1987― )がC1で日本人初の銅メダルを獲得という快挙を遂げた。

[中田弘良 2019年4月16日]

『細谷悦哉・中田弘良著『カヌー入門』(1969・学術資料刊行会)』『山口徹正著『初めてのカヌーイング』(1990・大泉書店)』『ジョン・ダウド著、堀田貴之、ロリー・イネステイラー訳『シーカヤッキング』(1990・CBS・ソニー出版)』『細田充編著『カヌー』(1991・山と渓谷社)』『藤原尚雄著『全国カヌーツーリングガイド』全2巻(1991、1992・山海堂)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カヌー競技」の意味・わかりやすい解説

カヌー競技
カヌーきょうぎ
canoeing

湖沼や渓流でカヌーを操り,パドル ( ) で漕ぎながらスピードや得点を競う水上競技。 1865年頃,近代カヌーの祖といわれるスコットランドの弁護士ジョン・マクレガーが自作のカヌー『ロブ・ロイ』でヨーロッパ沿岸やスエズ運河などを漕いで旅をしたのが,競技としての始まりとされる。その後イギリス,アメリカ合衆国,カナダなどでカヌークラブが相次いで設立され,1924年,国際カヌー連盟 ICFが創設。日本へは 1936年に伝わり,1937年には国内初の競技会が荒川の尾久コースで開催された。 1938年,日本カヌー協会が発足 (1980年日本カヌー連盟に名称変更) 。競技には,片端だけブレードのついたパドルで,艇の片側だけを漕いで進むカヌー (カナディアン) と,両端にブレードがついたパドルで左右交互に漕ぎながら進むカヤックが使われる。 1936年のベルリン・オリンピック競技大会からフラットウォーターが,1972年のミュンヘン・オリンピック競技大会からスラロームがそれぞれ正式種目として採用された。ほかにワイルドウォーターカヌーマラソン,カヌーポロ,カヌーセーリング,カヌーサーフィンなどがある。

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百科事典マイペディア 「カヌー競技」の意味・わかりやすい解説

カヌー競技【カヌーきょうぎ】

水上スポーツの一種。1865年英国の弁護士J.マグレガーが自作のカヌーでヨーロッパの水域を旅行し,翌1866年ロンドンにカヌー・クラブが設立されて以来,近代スポーツとして普及した。1936年のベルリンオリンピックからオリンピック正式種目となり,1948年のロンドンオリンピックから女子種目も正式種目となった。静水でスピードを競うカヌースプリント,流れの中でゲートを通過する技術と所要時間を競うカヌースラローム,またオリンピック種目ではないが,急流に障害物のあるむずかしいコースで行われるカヌーワイルドウォーターなどがある。→カヌーポロ
→関連項目カナディアン・カヌーカヤック

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世界大百科事典(旧版)内のカヌー競技の言及

【カヌー】より

…その諸工程には,カヌーのスピードと安定性を神に祈願する呪術的儀礼が伴っている。【須藤 健一】
【カヌー競技】
 カヌーをこぎ静水や急流で速さ,得点を競うスポーツ。canoeingと呼ばれる。…

※「カヌー競技」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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