カベーリン(Veniamin Aleksandrovich Kaverin)(読み)かべーりん(英語表記)Вениамин Александрович Каверин/Veniamin Aleksandrovich Kaverin

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カベーリン(Veniamin Aleksandrovich Kaverin)
かべーりん
Вениамин Александрович Каверин/Veniamin Aleksandrovich Kaverin
(1902―1989)

ロシアの作家。プスコフ生まれ。1920年代初頭、文学グループ「セラピオン兄弟」に依拠して作家活動を開始。最初の単行本『師匠たちと弟子たち』(1923)は、小説の形式に対する若々しい実験精神を示す幻想小説集である。しかし「現実を描かない形式主義者」という批判を受け、その後、題材をソ連時代のロシア社会にとるようになり、ペトログラードの悪党どもを描いた『巣窟(そうくつ)の崩壊』(1926)、ある孤児が北極圏を飛ぶパイロットになるまでを描いた波瀾(はらん)万丈の冒険小説『二人のキャプテン』(1944)、画家を主人公とした『鏡の前で』(1972)、幻想的童話『地図のない町で』(1981)など数多くの小説を書いた。巧みに筋を扱って小説を組み立てることにかけては随一であった。晩年には貴重な自伝的回想『照らされた窓』(1975)や『エピローグ』(1989)を発表している。また、文壇の自由派(リベラル)としての活動(たとえば、フェージンあてに書かれたソルジェニツィン擁護の手紙)も特筆に値する。

沼野充義

『沼野充義訳『師匠たちと弟子たち』(1981・月刊ペン社)』

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