クメン(その他表記)cumene

精選版 日本国語大辞典 「クメン」の意味・読み・例文・類語

クメン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] cumene ) 芳香族炭化水素一つ無色透明の油状液体。タール系、石油系の芳香族油の中に少量存在する。フェノール石炭酸)、アセトン原料イソプロピルベンゼン

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改訂新版 世界大百科事典 「クメン」の意味・わかりやすい解説

クメン
cumene


イソプロピルベンゼンクモールともいう。芳香族炭化水素の一つ。天然には,植物精油(クミン油)中に,また石油中に存在するが,これらからの分離は困難である。無色透明の液体で,融点-96.02℃,沸点152.39℃。クメンは,重要な有機工業化学製品の一つであり,ベンゼンとプロピレンから,酸触媒液相法では硫酸あるいは塩化アルミニウム,気相法ではリン酸-担体)を用いて製造される。クメンを原料として,いわゆるクメン法により,フェノール(石炭酸)とアセトンが製造される。この方法は,クメンを酸素で酸化しクメンヒドロペルオキシドとし,これを酸触媒で分解するもので,得られる生成物のフェノールは数工程を経てナイロン6の原料に,またアセトンも重要な合成樹脂製造原料であるメタクリル酸メチルに変換される。


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クメン」の意味・わかりやすい解説

クメン
くめん
cumene

芳香族炭化水素の一つ。イソプロピルベンゼン、クモールともいう。ヒメウイキョウCuminum cyminumから得られる精油であるクミン油から得られるのでこの名がある。工業的にはベンゼンにプロピレンをフリーデルクラフツ反応させて製造される。水には不溶であるが、各種有機溶剤には溶ける。かつては高オクタンガソリンの配合剤としても用いられた。またクメン法によるフェノールとアセトン製造の合成原料。また、アセトフェノンやα(アルファ)-メチルスチレンの合成に用いられる。

[向井利夫]


クメン(データノート)
くめんでーたのーと

クメン

 分子式 C9H12
 分子量 120.2
 融点  -96.02℃
 沸点  152.39℃
 比重  0.8620(測定温度20℃)
 屈折率 (n) 1.49145

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化学辞典 第2版 「クメン」の解説

クメン
クメン
cumene

isopropylbenzene.C9H12(120.19).C6H5CH(CH3)2.はじめクミン酸(p-イソプロピル安息香酸)を石灰と蒸留して得られたのでこの名称がある.現在は,ベンゼンにプロペンをフリーデル-クラフツ反応させて製造される.沸点153 ℃.0.8620,1.489.各種有機溶剤とまざる.クメン法によるフェノール,アセトン製造の中間製品として利用される.[CAS 98-82-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クメン」の意味・わかりやすい解説

クメン
cumene

クモール,イソプロピルベンゼンともいう。 (CH3)2CHC6H5 で表わされる。沸点 153℃の無色透明の液体。ベンゼンとプロピレンから硫酸あるいは塩化アルミニウムを触媒として液相において,もしくはリン酸 (担体はケイ藻土など) を触媒として気相において,工業的に合成される。クメン法によってベンゼンとプロピレンからフェノールとアセトンを製造するときの中間体である。溶剤としても使われる。

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