改訂新版 世界大百科事典 「ケイ藻土」の意味・わかりやすい解説
ケイ(珪)藻土 (けいそうど)
diatomite
ケイ藻の遺骸が,海底,湖沼底などに沈積して形成されたケイ質堆積岩で,粘土,火山灰,有機物などを含む。未固結のものはケイ藻軟泥といわれる。ケイ藻土は,吸収材,吸着材,脱脂材,ろ過材,断熱煉瓦材,セメント混和材,充てん材,研磨材などに用いられる。ケイ藻土は不純物を含むので,使用目的に合った精製処理が行われる。一般に,砂などの不純物の除去には水簸(すいひ)処理,有機物除去には煆焼(かしよう)処理,鉄分除去には脱鉄処理,ゴム,紙,顔料の充てん用の白色化(脱色化)には酸処理あるいは水ガラスと混合しての焼成処理を行う。また使用法により,粉砕,球状成形,型抜成形などの処理が行われる。
ケイ藻自体の化学組成は,SiO2(96.16%),Al2O3+Fe2O3(1.80%),強熱減量1.98%であるが,ケイ藻土は一般にSiO2が85~95%程度で,ほかに鉄,アルミニウム,カルシウム,マグネシウムなどを含む。純粋のケイ藻土は石英と同じ耐火度を示す。酸化鉄が1~1.5%を超すと焼成物は着色し,ろ過に対しては不適当である。ろ過材としての利用では,形態も問題となり,針状の殻からできているケイ藻土は,ろ過効果は大きいが,ろ過速度は小さくなり,大きな四角形の形態をもつものは,この逆の効果を示す。ケイ藻土の吸収能はケイ藻土の気孔率によって定まり,殻の気孔中に他の物質が入っていたり,殻が破壊されていると吸収能も小さくなる。
アメリカ,ソ連では白亜紀の地層中からも報告されているが,日本では第三紀,第四紀の地層から産する。主な産地は秋田県鷹巣,宮城県円田村(現,蔵王町),石川県能登,岡山県八束,大分県豊後中村である。
執筆者:下田 右
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報