クリスタルバイオレット(読み)くりすたるばいおれっと(その他表記)crystal violet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリスタルバイオレット」の意味・わかりやすい解説

クリスタルバイオレット
くりすたるばいおれっと
crystal violet

トリフェニルメタン系塩基性染料の一つで、美しい紫色をもつ。ジメチルアニリンホスゲン塩化亜鉛触媒により縮合させて合成される。堅牢(けんろう)度は高くないが、安価で着色力が強いので、絹、羊毛染色のほか、インキなどにも使われている。酸により紫→青→緑→黄と変色するので、非水系におけるpH指示薬(酸塩基指示薬)としても利用される。

 メチルバイオレットは、クリスタルバイオレットよりもメチル基の数が少ないものの混合物で、これはジメチルアニリンの銅触媒による酸化で合成される。製造の条件により組成が多少異なり、色調赤みの強いもの、青みの強いものなどさまざまである。木綿レーヨン、紙などの染色、インキ、顔料などの製造に用いられる。

[飛田満彦]


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化学辞典 第2版 「クリスタルバイオレット」の解説

クリスタルバイオレット
クリスタルバイオレット
Crystal Violet

tris[4-(dimethylamino)phenyl]methylium chloride.C25H30ClN3(407.99).C.I.42555,C.I.Basic Violet 3ともいう.塩化亜鉛の存在下,N,N-ジメチルアニリンをホスゲンと反応させると得られる.暗緑色の粉末.分解点215 ℃.水および極性有機溶媒に溶けて紫色を呈する.中和指示薬(pH 1.5付近で酸性側の緑色から塩基性側の青色にかわる)として,とくに酢酸中での非水滴定に常用される.また,各種金属や過酸化水素の比色定量,生体染色,木綿のタンニン媒染,羊毛,絹用塩基性染料に用いる.LD50 96 mg/kg(マウス経口).[CAS 14426-25-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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