クロゴケ(その他表記)Andreaea rupestris Hedw.

改訂新版 世界大百科事典 「クロゴケ」の意味・わかりやすい解説

クロゴケ
Andreaea rupestris Hedw.

クロゴケ科の代表的な高山蘚類。世界中の寒冷地に広く分布し,日本でもとくに高山帯に多く,裸岩上に密な群落をつくる。植物体は黒褐色,茎は直立し,高さ1~2cm。葉は狭卵形で中央脈を欠く。蒴柄(さくへい)はごく短いが,胞子体をつけた茎の先端部が細長く伸びて蒴柄状となる(この部分を偽柄という)。蒴は卵状楕円形で,蓋(ふた)も蒴歯もなく,中央部が縦に4裂して,その裂け目から胞子を放出する。ガッサンクロゴケ(別名ユキミクロゴケ)A.nivalis Hook.は北半球の高緯度地域に分布し,日本では中部地方以北の高山の湿岩上に産する。クロゴケと異なり,葉は披針形で中央脈がある。クロゴケ科は,偽柄をもつ,蒴が4裂する,原糸体と仮根がリボン状または葉状である,などの点で他の蘚類と大きく異なっている。世界には3属数十種,日本には上記の1属2種がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロゴケ」の意味・わかりやすい解説

クロゴケ
くろごけ

クロゴケ類は、コケ植物蘚類(せんるい)綱の一群で1科2属十数種がある。高山ないし寒地の花崗岩(かこうがん)質の岩上に塊になって生える。胞子体は茎の先につき、茎の先が伸長して胞子体の柄のようにみえる偽足の先に蒴(さく)がつく。蒴には蒴歯も蓋(ふた)もなく、熟すと縦に4裂し、行灯(あんどん)形になる。胞子は発芽して数細胞からなる塊状の原糸体をつくる。日本には1科1属4種がある。

 クロゴケAndreaea rupestris var. fauriei (Besch.) Takakiは黒赤色をして高さ1~2センチメートル、葉が密につき、わずかに枝分れをする。葉は卵状長楕円(ちょうだえん)形、中央脈はない。分布は北海道から九州にかけ、高山の日当りのよい花崗岩などの上に黒褐色の塊となって生える。ガッサンクロゴケの葉は中央脈をもつ。

[井上 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロゴケ」の意味・わかりやすい解説

クロゴケ(黒苔)
クロゴケ
Andreaea fauriei

セン類クロゴケ科の1種で,主として高山のケイ酸を含んだ岩石表面に生じる。日本特産。色は黒ずんだ赤褐色で,茎は単立または分岐し直立する。高さ1~2cmで先のとがった葉を密生している。葉には中肋がない。雌雄異株雌株の頂部に造卵器を生じ,受精が完了すると 蒴ができる。苔帽は発達せず,苔蓋もできないで,蒴は熟すると縦に4裂する。この点ほかのセン類 (ニワスギゴケなど) と著しく異なり,ある種のツノゴケ類に似ている。

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