グリオキシル酸回路(読み)グリオキシルさんかいろ(英語表記)glyoxylic acid cycle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

グリオキシル酸回路
グリオキシルさんかいろ
glyoxylic acid cycle

アセチルコエンザイムA (アセチル CoA) の代謝経路の一つ。高等植物のグリオキシソーム細胞器官および微生物にみられる。アセチル基 ( C2 ) をもつアセチル CoAは,まずオキサロ酢酸 ( C4 ) と反応してクエン酸 ( C6 ) を生じ,次いでコハク酸 ( C4 ) とグリオキシル酸 ( C2 ) に開裂する。グリオキシル酸はもう1分子のアセチル CoAと反応し,リンゴ酸 ( C4 ) を経て出発物質のオキサロ酢酸に戻る。リンゴ酸からオキサロ酢酸への過程で補酵素 NAD+ の還元を伴うので,回路の反応収支は 2アセチルCoA+NAD+コハク酸+NADH+2CoA となる。コハク酸はミトコンドリアに運ばれてクエン酸回路オキサロ酢酸に変るので,結局,アセチル CoA2分子のアセチル基からオキサロ酢酸1分子ができることになる。アセチル CoAは脂肪酸のβ酸化によって,また,酢酸からアセチルリン酸を経ても生じるので,この回路は脂肪酸と酢酸の代謝経路とみなせる。植物では,発芽に際して貯蔵脂肪の利用時に,微生物では,酢酸を炭素源とするときに,この回路の酵素群の活性が上昇する。

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百科事典マイペディアの解説

グリオキシル酸回路【グリオキシルさんかいろ】

クエン酸回路の変形回路。クエン酸回路でイソクエン酸が2度の脱炭酸を経てコハク酸に代謝されるところに,直接コハク酸とグリオキシル酸CHOCOOHへの分解反応が生じ,後者がアセチル補酵素と反応しリンゴ酸を生じる。高等植物や微生物にみられる代謝経路で,脂肪酸の分解などで得られた酢酸を,炭素源またはエネルギー源として利用するときに用いられる。特に,植物種子が発芽するときに,貯蔵肪脂を利用する代謝に重要。

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法則の辞典の解説

グリオキシル酸回路【glyoxylate cycle】

植物や微生物に存在し,酢酸を炭素源およびエネルギー源として利用するための代謝経路である.

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世界大百科事典 第2版の解説

グリオキシルさんかいろ【グリオキシル酸回路 glyoxylate cycle】

微生物から高等植物にまで存在する代謝経路。酢酸を炭素源あるいはエネルギー源として利用する場合に働く。たとえば種子の発芽に際して,貯蔵脂肪に由来する脂肪酸をアセチルCoAに分解し,この回路で代謝を行う。図に示すように,イソクエン酸はまずコハク酸とグリオキシル酸に分解し,次にグリオキシル酸はアセチルCoAと縮合してリンゴ酸を生じる。この反応はクエン酸回路の一部と組み合わされ,リンゴ酸は酸化されてオキサロ酢酸となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

グリオキシル酸回路
ぐりおきしるさんかいろ
glyoxylate cycle

微生物と植物にだけ存在する代謝経路。微生物が酢酸だけを炭素源およびエネルギー源として生育するときや、植物の脂肪種子が発芽する際に用いる合成経路で、1957年コーンバーグ・クレブズA. Kornberg Krebsによって提唱された。クエン酸回路(TCA回路ともいう)の一部と類似した環状の経路で、この回路のなかに2分子の酢酸が取り込まれ、回路を1回転すると1分子のコハク酸が生成される。酢酸を炭素源とする細菌では、この経路によって糖をつくりだし、さらに生体構成物質をつくる。
 高等植物では、脂肪を貯蔵物質とする種子が発芽する際にこの経路の酵素群が発現して貯蔵脂肪が糖に変えられ、これから生体成分がつくられる。この回路の酵素はβ(ベータ)‐酸化系の酵素とともにグリオキシゾームという細胞内の顆粒(かりゅう)に局在し、発芽初期に活性が高くなるが、発芽後期には活性が減少する。[吉田精一]
 グリオキシル酸回路はTCA回路と共有する経路をもち、TCA回路の側路となる。TCA回路の場合、アセチル補酵素Aのアセチル基(CH3CO-)の2個の炭素原子は2分子の二酸化炭素になってしまうが、グリオキシル酸回路の場合は、アセチル基2個を取り込んで炭素原子4個からなるコハク酸が生ずる。このコハク酸はさらに変化を受けて糖やアミノ酸になる。脂肪もアセチル補酵素Aにまで分解されてからこの回路に入る。高等動物にはこの回路がないので、脂肪から糖をつくりだすことはできない。[飯島康輝]

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